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第25話「嫉妬」
「……店長」
そろりと部屋のドアを開けると、
「入ってくんなっ!!」
低く鋭い声が飛んできてさすがの僕も入り口で縫い留められる。
「何……で?」
勝手に震える声を何とか出すと、店長は僕に背を向けてベッドの上で胡座をかいた。
向けられた大きな背中がやたら遠い。
「……店長……?」
応えてもくれない、こっちも見ることさえないその背中に声を掛けても店長は返事さえしてくれない。
「ヤダよ!」
叫んで部屋に入ってその背中に抱きつく。
それでも店長はこっちを見ない。
「ねぇ!何で!?」
無理矢理覗き込んで見ても、店長はグッと歯を食い縛っていた。
「ねぇ、ちゃんと話して下さいよ」
とりあえず自分が落ち着こうと思うが、目が合わないことが不安で仕方なくてその両頬に手を伸ばす。
それは避けなかった店長はやっと少しこっちを見た。
「店……ううん。雅美 さん」
「ちょっ……」
言いかけた呼称を名前呼びに変えると、店長が真っ赤になる。
俯こうとするそれを逃さないようにしっかり捕まえて僕はちゃんとその目に映った。
「恋人だもん。雅美さん……じゃダメですか?」
3年ちょっと呼んできたそれを変えるのは僕だって照れる。
でも、ずっと呼んでみたかったのは確かだった。
耳まで赤くしながらも小さく首を横に振る姿にまたちょっとキュンとする。
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