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第25話(2)

「じゃあ、雅美さん。何でずっと見てくれなかったんですか?」  雅美さんの正面に膝立ちして頬に置いた手は離さないまま尋ねた。  離れたら逃げてしまう気がしたから。  僕はそれを逃したくないから。 「昼……」 「ん?」  低く呟かれた声がうまく聞き取れなくて首を傾げると、雅美さんは口をつぐんでフと目を逸らす。 「ちょっと!ちゃんと見て下さいよ!」 「お前が変なことするから!」  また逸らされたのが嫌でグッと顔をこっちに向かせると雅美さんはヤケになったように喚いた。 「え?特に何もしてないですけど?」 「かわ……クソっ!!」  思わずきょとんとすると、雅美さんが何かを言いかけて舌打ちをする。 「えっ!?かわいい!?僕、かわいかったですか!?」  もちろん、僕は聞き逃さなかった。  嬉しくなってチュッと軽くキスをすると雅美さんの顔がまた一気に赤くなる。 「お前はすぐそうやって……」  ムッとするその唇を舐めると、僕はそのま舌を押し込んで割り開いた。  歯列をなぞりながら角度も変えて深く抉る。 「んっ……」  雅美さんの鼻にかかった声を聞くと、混ざった唾液を吸ってチュッとその目元にもキスをした。 「この目は僕だけを映してて」 「それはお前だろうが」  微笑むとちょっと息を乱した雅美さんが目を細める。 「どういうこと?」  聞くと、雅美さんはまた目を逸らした。

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