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第26話「離れ離れ」
夏を迎えて、大学も試験期間を終えて夏休みに入ったある日曜。
「あー……無理」
バイトを終えて夕飯を食べ終えた後、テーブルにうつ伏せになった僕を店長はチラッと見るだけでキッチンに戻って行く。
「うぅ……雅美さーんっ!」
「バッ!店で名前呼ぶなっ!!」
顔を出した店長はワタワタとボールを落としたりしておもしろい。
だが、僕のテンションはすぐに下がってしまった。
ため息を吐くとキッチンの電気を消して手を拭きながら店長が戻ってくる。
「佐倉、おら、帰るぞ」
優しさの欠片も感じられないその言い方に目だけで訴えると、もう一度戸締まりを確認してきた店長は舌打ちをして動かない僕の腕を引いた。
そんな圧倒的な力で起こされてもなかなか立ち上がれない。
「あのなぁ……」
ため息を吐くと店長は僕の腕も離してこっちを見下ろす。
「お前、帰らないなら俺、もう帰るぞ」
本当に歩き出してしまうその後ろ姿に慌てて抱きついた。
「意地悪ですよ」
背中にくっついたまま膨れても店長は足を止めない。
「明日から僕、居ないのに平気なんですか?」
事実を口にしただけで泣きそうなのに。
「…………だから、早く帰んねぇのかよ」
モゴモゴと僅かに言った店長の耳は真っ赤だった。
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