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第27話「帰国」
イギリスでは大学に通い、時間があると祠堂さんに紹介された事務所で働き、ホストファミリーの家に帰って……わざと自由な時間は作らなかった。
日本を発つあの日、空港に着いてタクシーを降りる直前に
「電話はしてくんな」
雅美さんに言われてその場では膨れたが、冷静になった僕は意地でも電話しなかったから。
イギリスでの生活に慣れた頃に昼に連絡すれば日本では店も営業が終わっているから……と電話をしようとも思ったが、そんなことをしたら帰りたくなって留学の意味を見失う気もして尚更意地を通したのだ。
留学は大学に入る前から考えていた。
それでずっと費用も貯めてきたし、祠堂さんのところで働くためのスキルアップとして祠堂さんが後押ししてくれたからこの留学は実現しているのだ。
雅美さんと離れてまで来たせっかくの時間を無駄にはしたくなかった。
どうせなら思いっきり勉強してやろうと貪欲になって、お世話になった家族に心配されるほどに。
だから、休日は思いっきり家族との時間を楽しんで、父のローガンさんと母のソフィアさん、娘のアリス(院生で歳は近かったから色んな話をした)とあちこち出かけたり、パーティーにもたくさん連れてってもらった。
雅美さんにはたまにメールをして、でも、決して『会いたい』とは言わない。
戸川が何度か電話してきて話はしたが、雅美さんには電話は結局一度も電話はしなかった。
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