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第27話(3)

「……日本」  久々に話す日本語が何か違和感で笑えてくる。  飛行機から降りて手荷物を待ちながら僕は意外と冷静だった。だが、 「佐倉」  手続きも終えて出てきた到着ロビーでかけられた声に僕は一気に涙の気配を感じる。 「おい、日本語忘れたのか?」  腕を掴まれた僕はそのまま膝を折って座り込んでしまった。 「なっ、おいっ!」  慌てて雅美さんに引き上げられて僕は人目も気にせずに抱きつく。 「本……物……」 「当たり前だろ」  僕の髪をぐしゃぐしゃにして雅美さんは少しだけ僕の背中に手を回してくれた。 「お店は?」  ふと気になって顔を上げると、雅美さんは僕の涙を静かに拭う。  雅美さんの格好は制服のままだし、時差を考えてもまだ昼間のはずだ。 「添田たちみんなでやってるからって追い出された」  確かに今日帰るのは雅美さんだけではなく戸川にも伝えたけど。  追い出される雅美さんを想像すると笑えてくる。 「会いたかったですよ」  微笑むと雅美さんは僕の荷物を持ってそっぽを向いた。  しかも、そのまま歩き出してしまって僕は慌てて追いかける。  でも、その腕に手を伸ばして組んでみても怒らないのは嬉しかった。  久々の日本、雅美さんの温もりを感じながら隣で歩くだけで胸がいっぱいで幸せ過ぎる。 「……ただいま」  ぽつりと呟くと、 「あぁ……」  雅美さんはこっちは見なかったけど、それだけ言って絡めている僕の腕にもう片方の手をそっと重ねてくれた。

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