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第27話(10)

 ビジネスホテルのカーテンは朝の光をそのまま届けてきて、繰り返し求め合いやっと微睡んでいた僕はその明るさにぼんやり目を覚ます。  目尻に涙の跡を残したまま、今日は眉も寄せずに眠っている雅美さんは相変わらず僕をしっかり抱き締めていた。  そのキツさが嬉しい。  日本に帰ってきた実感と雅美さんの元に戻ってきた安心感で僕は例えようのない幸せに包まれていた。 「ん……」  同じように光を感じて目を覚ました雅美さんは酷く声を枯らしていてかなりダルそうに僕をただぼーっと見つめる。 「水、持ってきましょうか?」  聞いても首を横に振って僕の頭をそっと抱き寄せてくれた。  トクトクと聞こえる雅美さんの心音を聞きながら目を閉じる。だが、 「あ、でも、今日月曜日じゃないですよね!?お店っ!!」  ハッと思い出して体を起こそうとすると、強い力でそれを阻まれた。 「ちょっ!本当に!!雅美さんっ!!もう!!聞いて下さいよ!!店ちょ……」  言いかけた僕の口をキスで塞がれる。  珍しいそんな反応に目を見開くと、雅美さんは離れてダルそうに髪を掻き上げた。 「今日は臨時休業。お前が帰ってくるから夕方からサプライズパーティー」 「……あの、言ったらサプライズではないですが?」 「チッ……」  この眉を寄せて舌打ちする姿も久しぶりで安心する。 「雅美さん、勃っちゃいました」 「はぁ!?そんなん朝勃ちだ!!」 「もう1回だけ……」  上目遣いでお願いすると、ヒクッと雅美さんは顔を動かしたがバチンと勢いよく僕の顔を叩いてきた。 「いったぁ……」 「今日は車あるから無理だ!!……かわいい顔すんなっ!!」  どうしてこの人はこうも僕を煽るのがうまいんだろう。

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