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第28話「プロポーズ」
結局、マンションに戻って来たのは18時を過ぎていて、添さんからかかってきた電話に僕が出ると何かを察したらしい戸川が電話を代わった。
『店長は歩けますか?』
久々の一言がそれってどうかと思うが、僕のせいなのでそこはツッコまないでおく。
「何とか歩けるようにはなったけど……声は出ない。……かな」
苦笑いしながら答えると、雅美さんから容赦ない蹴りが飛んできた。
『昨日店閉めて帰る時も車なかったし、今日もまだ車ないからそんな気はしてましたよ』
「さっすが、戸川!」
『笑えないですよ。どうします?どうせ知ってるんですよね?こっちはもうみなさん揃ってますよ?』
戸川の声を聞きながら雅美さんの方を見ると、雅美さんはノロノロと億劫そうにしながら着替えをしている。
「僕が時差でボケてたことにしといてくれる?19時までには行くよ」
『は?まだそんなにかかるんですか!?今からまた始めたりしないで下さいよ』
呆れたように言われて笑っておいた。
可能性は否定できない。
まぁ、さすがにヤろうとしたら張り倒されるだろうけど。
電話を切って雅美さんのスマホをダイニングテーブルの上に置くとちょうど雅美さんも着替えを終えて部屋から出てきた。
ギュッと抱きつきに行くと、腰を押さえて雅美さんがよろける。
思った以上にダメージが残っているらしい雅美さんを支えてそのお尻に手を伸ばしてみると、ビクッと震えて雅美さんが平手で僕の頭を思いっきり叩いてきた。
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