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第28話(2)
「もー、かわいい恋人にヒドくないですか?」
「お、お前が変な気起こすから……」
うるっと目を潤ませて見上げると、ぐっと歯を噛み締めて雅美さんはそっぽを向く。
「辛そうだからお尻の心配をしただけで盛った訳ではないですよ?」
そっちに回り込んで微笑むと雅美さんは目を細めて黙り込んだ。
「でも、喉もだいぶ辛そうですね。すみません。久々過ぎて加減できなくて」
かなり掠れたその声を心配すると、雅美さんは舌打ちをしてキッチンに行ってしまう。
「……雅美さん」
カウンターから顔を出すと、雅美さんは持っていたペットボトルから口を離してこっちを睨んだ。
何を言い出すか警戒するようなその顔を見て思わず微笑んでしまう。
「好きですよ。自分でもびっくりするくらい……愛してます」
まっすぐその目を見て言うと、真っ赤になった雅美さんは腕で顔を覆って……でも、チラッと目だけを出してこっちを見た。
「じゃあ……もう、離れんなよ」
「はいっ!」
返事をすると、雅美さんが身を乗り出してきて後頭部を引き寄せられて僕の額に軽く唇を押し付けられる。
「……そんなんじゃ足りません」
「ふっ、届かねぇよ!」
不意打ちのそんな行動にびっくりして照れると雅美さんが鼻で笑った。
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