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第28話(4)
「け……こん?」
力が緩んだのをちょっと残念に思いつつ、目を見開いたその顔が見れてニヤけるのが止められない。
「嫌ですか?」
「……や、だって、そんなん無理……」
微笑んで首を傾げると、雅美さんは落ち着きなく反応にも困っているようだった。
「イギリスは同性婚も認められているじゃないですか?みなさん幸せそうだったんですよ」
思い出しながらキュッとその胸に抱きついて体重を預けると、雅美さんは戸惑いつつもしっかり抱き留めてくれる。
「別に入籍したいとか、イギリスに行って結婚しようって言ってる訳ではないですよ?」
顔だけ上げるとしっかり雅美さんを見つめた。
「ただ、そのくらいの覚悟を持って雅美さんを愛していきたいんです」
僕の想いを全て伝えたくて。
「ダメですか?」
何も反応してくれないのが不安になって聞くと、雅美さんは僕を再び力いっぱい抱き込む。
「……ダメな訳ねぇだろ」
顔は見せてくれないけど、掠れたその声がちょっと震えていて僕も少し泣きそうになった。
幸せ過ぎて泣けるとか……最高でしょ?
「ずっと……傍に居てもいいですか?」
「アホか、お前」
「アホって……」
「離れんなっつっただろーがっ!」
力を緩めて雅美さんが僕の頭に思いっきりゲンコツを落としてくる。
「あー!喰いたいっ!!」
「バッ!てか、お前、急に敬語やめんなっ!」
「んー?ドキドキする?」
「うるせぇっ!」
服の裾から指を這わせて笑うと雅美さんは真っ赤な顔で逃げて行った。
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