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第28話(5)

 今度は戸川のスマホから電話がかかってきて言われるまま玄関のドアを開けると呆れたような戸川が立っていた。 「ごめんって」  笑ってみても戸川は細めた目をなかなか戻してくれない。  雅美さんが咳払いしながら出てくると 「店長……さすがにそれ誰かにツッコまれると思いますよ」  戸川は深いため息を吐いた。 「止まんない気持ちわかるだろ?戸川だってあの幼なじみくんをめちゃくちゃにするだろ?たまに大学休んでたし!」  喉を押さえながら鍵を締める雅美さんから戸川の方に視線を移して笑うと今度は戸川が変に咳き込む。 「エロいことはしてないよ。プロポーズしてただけ」 「プロポーズ!?」  戸川が僕と雅美さんを交互に見ると、雅美さんはまた少し顔を赤くしてそっぽを向いた。 「もう離れたくない。心から愛してるって気持ちはわかるだろ?」 「それは……まぁ。でも……」 「戸川。黙れ」  頷きつつも雅美さんを見上げる戸川に違和感を感じると、雅美さんはピシャリと言って歩き出す。  その声が掠れていて迫力はないが、眼力はさすがだ。 「何?」  聞いてみても戸川も目さえ合わせないし、雅美さんも思いっきり無視してくる。  エレベーターで降りてさっさと歩いていく2人を追って僕もとりあえず店に入った。

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