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第29話「幸せに」
酔っ払った雄吾くんと戸川がキスするのを見て、勝手に煽られた祠堂さんと咲も唇を合わせて添さんたちが騒ぐ。
なのに、じっと見ても雅美さんは目を逸して頑なに口元をガードしていたりして、僕たちだけイチャイチャはできなかった。
ちょっとモヤモヤしながらマンションに戻ったのは日付も変わってから。
「……雅美さん」
後ろ手で鍵を締めつつ見上げると、雅美さんは逃げるようにリビングに走っていく。
「ちょっ!何でっ!!」
慌てて追いかけてその手を掴むと、雅美さんは顔を真っ赤にしてとろんとした顔をこっちに向けた。
「え……」
一瞬戸惑った隙に雅美さんは僕を抱えて雅美さんの部屋に入る。
ベッドに降ろされながらキスをされて、深く口内を探ってくる舌にされるがままになった。
「っ……積極的なのはいいけど……ただされるのは性に合わない」
上下を入れ替えて髪を掻き上げると、雅美さんはゴクッと唾を飲んで熱の籠もった目を向ける。
「はる……と……」
まだ掠れたままのその声で呼ばれて心臓が跳ねた。
あんなに何回お願いしても呼んではくれなかったのに酔ってではあるが今呼んでくれたことに……。
軽く感動しつつ、見下ろした雅美さんの耳が真っ赤になっていることに気づいた。
「ねぇ……雅美さん」
その耳元に口を寄せると雅美さんはピクッと跳ねる。
「酔ってないでしょ?」
そのままそこで囁くと雅美さんはパッと目を見開いた。
目が合って慌てて逸したのを見て確信する。
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