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彼と彼の事情⑤
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「……で、こう言うんだぜ?」
「うおー!やっぱかわいいなぁ雪ちゃんは。最高だな!」
「おぅ!サイコーにかわいいっ!」
「そうかそうか……ところで日向。お前、なんでココにいるんだ?イヅルハルカはどうした??」
「ん?」
屋上に寝そべり、俺を見上げる南とその隣によいしょと腰掛ける俺。
「……さあ。教室じゃね?」
「?……お前ら喧嘩でもしたん?」
「しらねー」
「知らねぇって……」
どうでもいいとでも言うように呟き、南の隣にごろんと寝そべった俺を、南は不思議そうに見つめている。
「最近、イヅルハルカと一緒にいないよなー」
「そうだっけ?」
「お前ら、なんかあった?気になんじゃん!教えろよ」
心配そう……というよりは興味本位で聞いてくる南。
……そういえばコイツ、イヅルファンだったな。
南の教えてくれと言わんばかりの視線に、仕方なく手をつき起き上がり、フェンスの先を見ながら、かったるいながらも口を開く。
「別に……あいつが雪ちゃんを悪く言うから」
「ふーん……」
突然ニヤつく南。
「……なんだよ」
「いやー……日向くんも大人になったなぁと思って」
「はぁ?」
「一人の女の事で親友と喧嘩なんてさ……なんか青春ってカンジ?」
立ち上がり怪訝な顔で南を見る俺とは対照的に、南は楽しそうに笑っている。
なんだよ、人ごとだと思って……
そのまま出口へと向かうと、背後から聞こえる声。
「なぁ、日向ぁ。イヅルハルカがそこまで言うならさ、なんか理由があんじゃねぇの?……あいつも雪ちゃんを好きだったり、とか」
南が珍しく真面目口調で放った言葉。
その時、ぴゅーと強い風が吹いて。
沈黙のまま、自然と扉がバタンとしまった。
『あいつも雪ちゃんのこと好きなんじゃねぇの?』
……やっぱりそうなのか?
屋上の入口の扉前で、俺は立ち止まったまま考える。
今までにもそう思われる節はけっこうあった。
けれど……考えないようにしていた。
『ヒナのことを好きとは思えない』
……俺のことを心配するフリして実は自分のタメ?
『勝手にすれば?』
……あれはなんだったんだ?
ぜったい自分のもんになるって言う自信?
天才高校生なんて騒がれてても、普通の男だもんな。
俺は入口のドアにもたれかかり、ため息をつく。すでにイヅルとは1週間くらい、口も聞いてなかった。
……ずっとこのままなんだろうか。
なんだか心の中がからっぽになったような気分だった。
わからないけど
苦しいような
寂しい……ような
雪ちゃんになかなか会えないからか、それともイヅルと話せないからか……理由はわからなかった。
他の奴らと一緒にいても、南と毎日馬鹿話しても心の曇りはとれなかったんだ。
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そんなある日の放課後。
信じられない情報が耳に入った。
『イヅルが1組の高宮と付き合ってるらしい』
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