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変化

 人間というものは、なんで自分のものより人ものが魅力的に見えてしまうのだろうか……  人間というものは、なぜ人のものを奪ってでも欲しがってしまうものなのだろう…… 「人間ってさぁ、不思議だよな~!」 「……おい、南」 「ん?」 「意味わかんねー事ばっかいってないで、さっき食ったなると、俺に返せよ」 「はははー。それは無理だ。すでに消化されております。ごちそーさまっ」  ーーとある日、学校の近所のラーメン屋。  俺とイヅルと南の3人は昼休みに抜け出して優雅なランチタイムをとっていた。  カウンターにならんで座り、注文したラーメンを食べる。  そこまではよかったんだ。  南のバカが俺のなるとを食うまではっ!! 「オレはなぁ、なるとがマジで好物なの。わかる?1番最後に食べようととっといたんだよ!それをなぁ……っ」 「マジで?!なるとなんか好物のヤツいるんだなぁ~!嫌いだから残してんだと思った」 「だったら食う前に聞けよっ!」 「なんだよ!そんなに好きなら先に食っちまえよっ」 「まぁまぁまぁ……」  なると一枚で醜い争いがはじまったところで、見兼ねたイヅルが横から口をはさむ。 「なるとくらいで喧嘩すんなよ……ヒナ、俺のやるから落ち着けって」 「マジで?!いーのか?」 「ハハ、大袈裟だな、たかがなると一枚だぜ?」 「いや、されどなるとだ」 「おい南っ!お前がいうなっ」  笑いながら、イヅルが俺の器になるとを移した。  変わらない。  なんともない、いつもの光景。  ……なのに。  ソレが麺の上に浮いた瞬間、どきっと胸が鳴ったんだ。  ?  ……なんだ?  なんだ今のドキって?  辺りを見渡す。店の中には近くで仕事があるサラリーマンや工事現場のおっさんが2.3人だけだ。  そして当然、両隣にはラーメンをすする南とイヅルがいる。  ……勘違いか  首を傾げるも、そのまま普通にラーメンをすすり、最後に残ったなると一枚。それを箸でつまんだ。  その時、なんとなく隣のイヅルに目がいった。  瞬間。頭をよぎったのは……間接キスの4文字。  再び胸がドキリとなり、鼓動か速まるのがわかった。咄嗟に胸に手をあてる。  ……間違いなんかじゃない。  ーーいやいやいや。  なんだよ、間接キスって……  小学生かよ?  胸においた手から響く、分かりやすくさらに速まる心臓の拍動。  しかも、なんでイヅル相手にそんな事考えてんだよ……! 「ヒナ?くわねぇのかよ?」  箸を手に固まる俺に気付くイヅル。 「いらねーならまた俺が……」 「食うに決まってんだろ!」  手をのばす南を制して、慌ててソレを口にいれた。

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