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変化②

 ……最近、オレはおかしい 「やっべ!もーこんな時間だっ」  ラーメンを食い終わり、走って学校へともどる。  俺は並んで走る南とイヅルの後ろを少し遅れてついていく。  何気なく走っているのに、なぜか俺の視線は一つの背中を追い掛けていた。  ……背、高ぇなぁ  短く風に揺れる髪を、広い背中を、無意識に見てしまう自分がいる。  この間の雪ちゃんの事件から、俺はイヅルに対する気持ちが前と違う事に気づいた。  普通の友達って感じじゃなくて、なんと言ったらいいのかわからないが、もっと……もっと上の感情だった。  憧れ  いや、ちがう  尊敬……?  それが何かはわからなかったけれど、ほかのやつらへ感じる感情とは明らかにちがっていたんだ。  ーー今だって  走るイヅルの後ろ姿に目を奪われてる……なんて  普通、ありえないだろ?  もうじき門が見えるところまでいったイヅルと南。俺はやつらより数メートル後ろを追い掛ける。  さすが運動部だ。  俺とは持久力がちがう。  じっと見つめたままだった俺の視線が、突然振り返ったアイツの視線と重なった。 「ヒーナー!マジやべーよ!あと3分っ!!いそげっ」  整った顔をくしゃっとくずして、笑顔をつくるイヅルはすごくまぶしくて… 「………っ」  何故かうまく言葉を返す事もできなくなった俺は、かわりに全速力でやつのあとを追い掛けた。 ◇  ーー午後1時  カンカンと照り出した陽射しは確実に体力を消耗させて、俺たちからやる気を失わせる。  ……だいたいなぁ  食ったばっかなのに、なんで午後一で体育なんだよ。 「かったりぃなぁ……」 「……ああ」  校庭の端の木に寄り掛かり暑さから避難する俺に、さっきまでグラウンド周囲をはしっていた南がやってくる。 「飯食ってすぐにマラソンなんて、完璧いやがらせだっつの!ああ、腹が痛ぇ」   乱した息を調えながら南がどすっと隣に座る。 「……南。お前、運動部の割には足遅くね?」 「っ!ひでえ!俺はね、持久力がないだけっ!短距離ならすげぇっつーの」  先ほどの疾走の結果、10人中7位となんとも微妙な順位でゴールした男に笑いながら問う。  南は泣き真似をしながら笑っている。  ーそんな時、聞こえた女の歓声。 「?…なんだ?」 「こんな声されんのはアイツしかいねーじゃん?」  俺は次の走者に目を向ける。  郡を抜いて一人だけ先をいく、後ろ姿。

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