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カクシン②

 遠ざかっていくイヅルの後ろ姿をふいに見つめて思う。  ……こんなんじゃダメだ  感情を隠して誤魔化して。  このままじゃ、全部なしにした状態で元通りにするどころか、イヅルとの友達関係自体がダメになってしまう。  ガラリと教室の扉が開いて、担任教師が入ってくる。  拳にギュッと力を込める。  心の中に湧く決意。  どうせダメになるなら……一番簡単に終わらせたほうがいいんじゃないか?  ゆっくり顔をあげて、イヅルの大きな背中を見つめる。  今なら、まだ間に合うかもしれない。  この気持ちがまだ名前のつかないものだと誤魔化すことができるうちならば。  今のうちに、俺はアイツに今の素直な気持ちを伝えて、憧れが恋へと変化を遂げる前にアイツにフラれるんだ。  ……それなら、アイツも笑ってくれるかもしれない。 「日向」 「……!」  ぼけっとする俺の前にいつのまにか教科書をもった担任がいた。 「お前なにしてんだ?教科書もださずに」 「……ぼーっとしてました」  周囲から聞こえる笑い声。  前を見ると、イヅルと目が合った。  口がばかだなーと動いて、軽く笑う。 「正直なのはいいが、しっかりしろよ?」 「……ぁい」  ……俺の顔はこれ以上ないくらい赤くなっていたに違いない。  ーー次の日  昼休みに、俺はイヅルをあの使われていない部室に誘った。雪ちゃんとイヅルが話をしていた体育館裏のそこだ。  扉を締めるなり、俺は口を開く。  こんな話、いちいち言葉を考えたらどう話したらいいかわからなくなってしまう。ならもう簡単だ。話が重くならないうちにポンポン言ったほうがいい。 「なんかさ……最近、俺おかしいのかもしれないんだよ。ほら、お前らも言ってたろ?」  小さな声で呟いて、真正面にいるイヅルを見上げた。 「え?なんだよいきなり……」  イヅルは急にそんなコトを口にした俺を見て驚いた顔をする。  俺は小さくため息をつき、そんなイヅルの顔を一瞬見つめて、その場に座り込んだ。  ……こうして二人でいるだけで熱くなっていく顔と、胸の高鳴りを否定しながら。 「まあ、ぶっちゃけ言うとさ、俺さー……最近、お前といると変なんだよな」 「ヒナ?」  俯き、呟く俺の声が聞こえずらいのか近寄るイヅル。  目の前にイヅルの靴が見えて気付いた俺は、近寄るイヅルを遮るようにぱっと顔をあげ、笑顔をつくる。 「……ほら、お前ってさ、バレーやってる時とか、すげーカッコイイじゃん?あれ見てるとさ、なんか、こう……みんなお前の事よく見えちゃうのな!男とか女とか関係なしで!」 「ヒナ?」  何がいいたいのかさっぱりわからないとばかりに、その場で首をかしげるイヅル。  ……それでいいんだ。  わからないでいてくれた方がいい。 「すげーよな。かっこよくて努力家で優しくて……モテねぇはずがねぇよ」 「な、何だよ、急に。何いってんだよヒナ。お前だって……」  俺とイヅルの距離はおよそ1メートル。  ーーうん。  今しか、ない。 「……お前と一緒にいて、好きにならないはずがないっつってんの」 「ヒナ?」  イヅルを見上げて、言葉にする。 「俺さ……好きかもしれない」

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