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告白の行方①

❇  昼休み終了のチャイムが鳴った。  がやがやとあわただしく外を走る足音が聞こえる中、俺とイヅルはまだあの部室の中にいた。  沈黙が今だに続いていたけど、もう俺に言葉を発する勇気は残っていなかった。  何かいったら返されるであろう言葉。 『おかしいんじゃねぇの』 『無理に決まってる』 『気持ちワリィ』  想像出来得る限りの否定的な言葉ばかりが頭の中を埋めつくしていた。  イヅルの言葉を聞くのが怖くて、答えを聞くのが怖くて堪らなかった。  胸が苦しくて頭が痛くて、この沈黙がつらくて……  今すぐ駆け出して、逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。  自分の吐く息だけが増えていく。    あれ?  息ってどうやって吸って、どうやって吐くんだっけ? ……苦しい。  自分の息の音だけが聞こえる。  イヅルが何か言っている。  でも、何も聞こえない  イヅルの顔は見えるのに。  ……何?なんて言ってる?  目の前がちかちかしてくる。  どんどん自分の息が荒くなっていくのがわかった。 ❇ 「…………ヒナ!」 ぼんやりぼやけてた視界がはっきり見えてくる。 「………?」 「大丈夫か?」  気付けば目の前にイヅルの顔がある。  尻餅をついてロッカーに寄り掛かる状態の俺の真正面に腰をおろしていた。    そういえば、中学の時に見たことがある。  あれは部活の壮行式だったかな。普段は前にそんなにでないおとなしい子が、たまたま代表で挨拶することになって、直前になって真っ青な顔をして荒い息をし始めたことがあった。  確か、保健室に運ばれて、緊張とストレスで過呼吸になったって言っていた気がする。 「は……っ」  急に喉の奥から笑いが込み上げる。  ……過呼吸だって?俺が?  全校の前にたっても緊張なんてしないし、細かいことなんて気にもしない。そんな性格だって自分でもよくわかってる。  ーーなのに。    ただ一人。  たった一人のことでこんなことになるなんて。  あまりにも自分が惨めで情けなくて、笑っていなければ再び涙がでそうだったんだ。 「ハハ……だっせー……」 「ヒナ?」  乾いた笑いがこみ上げてきた。  イヅルは急に笑いだした俺をびっくりしたように見つめている。  もういい、ほんとに。  こんなんもう、続けられない。  笑っても笑っても、心の奥底の苦しみはとれなかった。  ……もう、どうにでもなってくれ  笑いを堪えてイヅルを見る。 「ヒナ……?」    ここでなにもかもが終わるわけじゃないし、世界中にイヅルだけしかいないわけじゃないんだ。  俺はイヅルの瞳を見つめる。  考えたら、楽になってきた。  ダメならダメで、いいんだよ。  ……だいたい男どおしじゃん  ダメじゃなきゃ、困るんだ。 「さっきのさ、言わなくてもわかるだろ?……答えてくれない」 「ヒナ……俺は……」  イヅルがはっとしたような顔をする。  ーーそうだよ、イヅル  お前がはっきり断ってくれねぇと、マズイんだ。  ……俺は狡い  お前に断られるために言ったんだ。  これ以上、お前に惹かれる前に  自分の傷が小さくすむうちに……  だから……  そんな困った顔してないで、はっきり俺をフってほしい。

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