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そうゆう関係①

 あつー…………  なんで夏っつーのはこんなに暑いんだ。 「イヅルー……クーラー」  ごろごろ床に転がりながら、俺はクーラーのリモコンに手を延ばす。 ーーと、その手を掴む汗ばんだでかい手。  ……なんだよ  あちぃんだよ、ちくしょー…… 「いや、あんま冷やすと身体によくないから、筋肉が固くなんじゃん?だからあんまりクーラーつけないんだけど」  言いながら俺のにぎりしめるリモコンをとりあげるイヅル。  ここは寮のイヅルの部屋。  イヅルの部屋だからイヅルに権限があんのはわかる。  わかる……けどさぁ……  テレビから聞こえるニュースのアナウンサーの声。 『……39度を越える真夏日……』  ……こんな日くらいクーラーつけたっていんじゃねえの? 「なあなあイヅルー……今日くらいクーラーつけよーぜー」 「仕方ねぇなぁ……」  ピッと音が鳴り、クーラーの吹出口が左右に動き始める。  ああ、やっと涼しくなる……!  そう思って吹出口の下を陣取った俺は、数分後、イヅルに再び問いかけた。 「……なあイヅル。ほんとにクーラーついてんだよな?なんか全然涼しくないような……」 「ちゃんとつけたよ。ほら」 「は?28度!?嘘だろ。暖房と同じじゃん!!……はぁーーー……」  俺が脱力していると、イヅルはもう一度仕方ねぇなぁとつぶやき、リモコンをいじった。今度こそ涼しい風が吹き出してくる。 「あー涼しい。生き返る」 「5分だけな」 「嘘だろ!?マジかよ……」 「そんなに熱いなら今日はもう帰る?」 「……」  見上げたイヅルの顔はなんか少し面白そうに笑っていて。  ……くそ  答えなんてわかってるんだろ?  見透かしたような表情が憎らしい。 『お前が好きなんだよ』  あの日以来、なんだか俺たちの関係は微妙に変化していた。 「あー!もぅ我慢できねぇ!」  5分後、本当に28度に戻された俺は、我慢できずにがバリとTシャツを脱いだ。そうして近くにあった雑誌で顔を仰ぐ。 「ヒナって暑がりだなー」  イヅルは笑いながら、冷蔵庫の中から冷えた缶のコーラを持ってくる。 「……オイ、いーのかよスポーツマン。身体を冷やすのはよくないんじゃなかったっけ?」 「いんだよ。今日は特別」  手渡しでもらったコーラを開け、俺の横に腰掛けるイヅル。 「なんだよ特別って……」 「試合に勝ったお祝い。ほら、お前もハイ」  無理矢理乾杯の形をさせるイヅルの缶に自分の缶を近づける。  カチンと重なる音。  昨日はイヅルたちバレー部の地区大会。学校あげて力いれてるバレー部が地区予選ごときで負けるはずもなく。 「ってかヒナは昨日応援にこなかったもんなー」 「あ?だって地区大会だろ?勝って当然……」  ぐびっと缶を傾ける俺に、イヅルはイタズラをする子どものような瞳をむけてくる。 「冷てぇの。俺のコト好きなくせに」 「ぶっ!ーおま、っ!今、それは関係ねぇだろーがっ」  一気に真っ赤になった俺をみて、イヅルは、ははっと腹を抑えて笑う。 「じょ、冗談っ、冗談!」 「~~~っ」 「あれ?ヒナのそれ、コーラじゃなくてビールだったっけ?」 「コーラって書いてあんだろ!」  酔っぱらってんのかよと笑うイヅルに何も返せない。  クソ……冗談ですむかっ!!  …ってゆーか、コイツってこんなんだったっけ?  イヅルってもっとクールなヤツだったんじゃねぇの?    イヅルと過ごす時間が増えれば増えるほど、みんなの前でのイヅルとは違う、いろんな顔のイヅルがわかったりして。そんな些細なことの1つ1つを知っただけでも、俺はなんだかとても嬉しかった。  俺のにやけた顔に気づいたのか、イヅルがまたからかってくる。 「……ほんと好きなんだなー、ヒナ」 「っ!ちげぇよ!お前みたいな阿保、好きなわけねぇだろ?!」 「え?コーラがって、意味だったんだけど?」 「ーーーっ」  売り言葉に買い言葉。  好きと言われれば嫌いと答えたくなるものだ。  惚れた弱みとでもゆうのか、言い合いしても、やっぱり不利なのは俺の方で。  あのときの告白は、それがいいのか悪いのか、冗談なのかなんなのかはわからないけれど、ネタにできるほどにまでなっていた。

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