35 / 120
間違い①
その日、いつものように俺はイヅルの部屋に遊びにきていた。
期末テストの最終日。
半日で学校は終わって、特に予定もなかった。
イヅルたちは部活が夕方まであるらしく、その間俺はイヅルの部屋で暇を潰していたんだ。
「あー……暇」
さんざんやりまくったゲームソフトをちらりとみて、その一つをとりだしセットする。
聞き慣れた音楽がはじまった。
『今日はみんなでテスト終わりの打ち上げするからお前もこいよ』
テスト終了直後、イヅルに言われた言葉。
バレー部の集まりだから俺にはなんの関係もないんだけれど、毎日のようにイヅルとつるんでいるおかげで、自然とバレー部員全員と仲良くなっていたんだ。
ぼーっとコントローラを手にイヅルたちの帰りをまつ。
……っとにバカだよな
自分自身にため息がでる。
いつのまに俺は、イヅルの事をこんなに好きになってしまったのか。
毎回毎回考えても、答えがでることはなくて。
……なーんかムカつくなぁ……
イヅルお気に入りのふざけた顔した豚のぬいぐるみの頭を叩く。
「……どうして俺がイヅルの言いなりみたくなってんだよ」
ぬいぐるみをみつめて、ぼそっとつぶやいてみる。
前に、やけにかわいい趣味だなとつっこんだら、前の彼女からのもらいものだとゆう事が発覚した。彼女に未練があるとかそうゆうわけじゃなくて、なんでも顔が幸せそうだから、見ていて癒やされるらしい。
そう聞かされても、俺はなんだか複雑な気持ちになった。
『え、妬いてんの?』
ははっと笑う余裕な顔。
俺の気持ちを知っていて、イヅルは平然とそんな事を言う。それは日常茶飯事で。
……なんだかすげー面白がられてるっつーか
遊ばれてるみたいな気分になんだよ。
豚の頭を軽く撫でて、しばしにらめっこ。
「おい日向……何、してんだ?お前……」
「?!」
そんな俺に向けられた呆れたような声。
豚を両手で抱えたまま振り向くと、そこに南がいた。
「え、お、あ、ああ!もう終わったんだな!はは」
「はは、じゃねぇよ。お前大丈夫?さっき豚に話しかけてなかった??」
訝しげな顔をして、南が近寄ってくる。
ーーやばい
だって俺、イヅルの可愛がってるぬいぐるみなんか抱きしめてたんだ。
ほんとはイヅルのぬいぐるみだからなんだけど、そんな事がバレてもやばい。
つーか、どう考えたっておかしいだろ?
……明らかに変なヤツじゃん
そんな事を考えて焦っている間にも、南は俺の抱えている豚をとりあげにらめっこ。
そうしてしばらくして、にかっと笑う。
な、なんだよ……
「よくみりゃ可愛いなっ」
「そーかよ……」
……南が単純でよかった
ともだちにシェアしよう!