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親友③
ふと、その男をよく見てみると、見た目は俺たちと変わらないくらいの年のようだった。黄色味を帯びた茶髪に何本もメッシュが入った髪。綺麗なアーモンド型をした瞳の中の色はグレーで、男の俺から見ても、綺麗だと思える顔立ちをしていた。
そうして心配そうにこちらに手を伸ばしてきた。俺があんなに失礼なことを言ったのに。
パッと見軽薄そうに見えるけど、わりとイイヤツなのかもしれない。
「あ、すみません。さっきのも……ちょっと聞いているうちに思い出してきて、イライラしちゃってて、八つ当たりでした。ほんとごめんなさい!」
「あ?ああ……別に、もういいよ。それよりほんとに大丈夫かよ」
差し伸べられた手をとり立ち上がる。彼は俺とちょうど同じくらいの身長だった。
「ありがとう。大丈夫、ちょっとふらついただけだから。それより、さっきのギターも歌も、ほんとはすごく良かったと思ったし、かっこよかったから!ほんとすみませんでした!」
このままではいられないと、頭を下げて謝った。
すると、一瞬の間、ぷっと吹き出すような声がした。
「……あんたって……見た目と違って素直なのな。
はは!かっこいいーって……そんならまぁいいけど」
笑いながら気のぬけるようなコトをいう男に思わず俺の緊張もほぐれる。
ちょうどそこに二人組の女子高生が通りかかり、その男に手をふった。
「ダイチー!今日はもう歌わないのー?」
「今日はもうやんない」
「じゃー明日くるね」
「気が向いたらやってるから、来てもいないかも」
なんだよそれと、笑いながら二人組が通り過ぎていくのをみていると、振り返った顔がああ、と笑った。
「俺、そこの裏の学校の1年」
「ダイチ、くん」
「そう。葉山大地っていうんだけど。あんたは?」
「日向尚。俺も同じ高1」
「ふーん。よろしく、ナオ。俺、お前のこと結構気に入った」
ダイチから発せられた言葉に驚いた。
さっき初めてあったヤツになのに、なんか面白そうなヤツだ。
「ほんとはさ、ふらついたとき、見捨てて帰ろうかと思ったんだ。すげえムカつくこと言われたし」
「それはほんとごめんなさい」
「同い年なんだしタメ口でいいじゃん。まあ、でも俺みたいな善人はそうゆうのほおっておけなかったつうかー」
「ホントの善人はそんなこといわねぇよ」
2人で向き合って笑い合う。
あー……なんだろう。とても楽で懐かしいような感覚。ダイチと話していると自然と緊張がほぐれてく。
「なぁ、さっきイライラしてたからっていってたけど、俺の弾いた曲がってこと?俺の曲、そんなに誰かと似てた?」
俺はゆっくり首をふる。
「いや、勘違い」
「ふーん」
「なぁ、ダイチって毎日ああゆう風に歌ってんの?」
「ん?あー……まぁ毎日かな」
「一人で?」
「そう。前は仲間と2人でやってたりもしたけどな。高校はいってからはみーんな忙しいのよ」
俺たちはそれからいろんなことを話した。
会ったばかりで全く知らないやつのはずなのに、なんだかダイチと話してるとすごく気分が楽になった。
……最近では学校でも気がはっていたせいだろうか
楽しくて仕方なかった。
「ハハ、それ、最高だな!」
「だろ?そんでさー」
たわいのない、くだらない日常のバカ話。そんなんでずっと笑えた。
……ああ、そうだ
ちょっと前、それまで俺は、毎日こうやって過ごしてたんだよ。
イヅルとたわいのない話して、ふざけて、笑って、そうして毎日を過ごしてたんだ。
それはついこの間のことなのに、まるで遠い昔のことのように感じた。
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