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偶然なのか運命なのか②
「え、なんだ!お前らって知り合いなの?」
楽しそうにケラケラと一人笑うダイチの前で気まずそうに固まる雪ちゃん。俺は何も言えず渇いた笑みを浮かべるくらいしかできない。
そんな訳がわからない状況の中、なんとか口を開いてみる。
「え……ダイチはなんで雪ちゃ……高宮さんの事……」
「ああ。しってんのかって?だーって俺ら一応付き合ってたもんな?誰かが目移りばっかするから別れちゃったけど、な?」
確認するようにダイチが目を細めて雪ちゃんに問う。彼女は下を向いて俯いた。
「って、おーい?」
「………」
一人、首を傾げるダイチに、俺たちは未だ無言のままだ。
なんだこれ。どうすんだよ……すげぇ微妙な空気じゃん
予想外の展開に頭の中が混乱している。
……雪ちゃんがダイチと付き合ってたって?
頭の中に、ふとあるセリフが蘇る。
『高宮が今付き合ってるH高の男、俺の友達なんだよね』
……あのとき、イヅルが雪ちゃんに言った言葉。
イヅルの友達はH高で雪ちゃんと付き合ってた。んで、ダイチも……H高。雪ちゃんと付き合ってた?
こんな偶然て、ある?
「じゃ、じゃーあたし、急いでるから!」
「あーまたねー」
あまりの沈黙と微妙な空気に耐えきれず、逃げるように立ち去る雪ちゃん。そんな様子を相変わらずだなと呟き見ているダイチ。
「ナオ?どーかした?」
しばし頭の中を整理して、雪ちゃんがいなくなったのを見計らってようやく俺は口を開いた。
「なぁダイチ」
「ん?」
「お前の親友ってさぁ……」
ーーちょうどそのときだった
「ワリィ!やっと抜け出せた」
はぁと少し息をきらせながらやってきた、その
男の聞き慣れた声。
「あ、おっせぇよ!ナオ、こいつ!俺の中学ん時からの親友」
「ばっか。親友とかゆーな!恥ずかしいだろ?」
「おい!ナオって!」
声をかけられても振り向かない俺にダイチが声をかける。
だって、さっきの一言を聞いただけで、一本の線がつながったんだ。
「?……ナオ?」
顔をあげると、思った通りのやつの顔がそこにあった。
そうして、一瞬の間。
「え、ヒナ……?」
「えー!なんだよ、また知り合いかよ?何それ」
心底可笑しそうに笑うダイチと、驚いたようなイヅルの顔がそこにはあって。
タオルを首にかけて片手で汗をぬぐうイヅルの姿。それが雲に隠れて日もでていないのにまぶしくて仕方がない。ダイチの親友って……イヅル?
混乱する。だからってどうするワケじゃないけど、今はなんだかどう反応すればいいのかわからない。
ちゃんと仲直りすらしてないのに……
「……久しぶり」
「久し……ぶり」
このありえない偶然に、俺はただイヅルの顔を凝視することしかできなかった。
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