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心とココロ①

 昨日、あのあとイヅルとはたわいもない話をして別れた。 ◇ 「なんだ、お前ら知り合いだったのかよ!イヅル、俺の親友のなおくんでーす!」  ダイチが笑って俺の肩に腕をまわすから、俺は渇いた笑いを浮かべるしかなかった。  イヅルはといえば、面白くなさそうな顔をして笑いもしない。 「あれ、何この感じ。なんかいつもと感じちがくね?」  ……この微妙に重い空気、ダイチには伝わってないんだろうか。いや、伝わってはいても、何がなんだかわからないんだろう。  俺はなんとか笑みを浮かべながらイヅルをみた。イヅルはなぜか怒ったような顔で俺をみている。 「……ダイチ」 「ん?」 「ヒナと親友っていつから?」 「うーんと2週間前?」  な?とダイチが俺の方を向いた。すぐ眼の前、前髪がふれるくらいにの近い距離に思わずのぞけると、後ろから不機嫌そうな声がする。 「……ヒナ、暑くねぇの?お前暑がりじゃなかったっけ?」 「え?……あ、あちぃよ?おい、ダイチ、離れろよ!」 「ん?なんで?別にいいだろ?一晩過ごした俺とナオの仲じゃーん」  楽しそうにわらうダイチ。そりゃ、休み中ずっと暇だったから、ダイチんちに遊び行ってそのまま泊まってゲームしたりとかしたよ。だって一人暮らしだって言うし。  イヅルには電話もせず、夏休み中ずっと会っていなかったのに、その間ダイチとずっと遊んでいたことをなぜか申し訳なく、罪悪感のようなものを感じて。  イヅルの怒ったような表情も追い打ちをかけて。    結局、あまり話がはずむこともなく、軽く話したくらいで分かれたんだ。  そんな事があった、一晩あけての今日だよ。  本当は今日、ダイチも一緒にいくことになりそうだったんだ。 「あ、そういや明日夏祭りあんじゃん?」 「え」  知ってる。イヅルといく予定だったし。 「せっかく知り合った縁だし、みんなで一緒にいかね?」  ダイチは俺とイヅルを交互にみた。 「いかねぇ」  答に詰まる間もなく、イヅルが即答。 「なんでよ」 「明日も部活」 「マジかよー?ナオは?」 「あ、俺は……」 「ヒナも用があるっつってたよな?」  間髪入れずにイヅルが横から口を挟んだ。隣をちらりと見れば、有無をいわせぬような鋭い視線がそこにあって、慌てて口裏を合わせる。 「あ、ああ……」 「そっか、残念。じゃーまた地道にいつもの宣伝活動でもするか。外にいりゃ少しは花火みえるし」  ダイチのいう宣伝活動ってのはストリートでのいつもの演奏のコトだ。自分を宣伝してるみたいだからって、前にいってた。 「……」  ダイチが去ったあともイヅルは険しい顔をしていて。  そんなイヅルにこれから会わなければならない。 「あー……どうしよ」  昨日まではあんなにこの日が待ち遠しくて早く会いたいって思っていたのに。今はよくわからないけど、なんだかイヅルと顔が合わせにくい。  別に何も隠すような事もないんだけど、なんだか後ろめたいというか、とにかく、会いにくい。  ……それに 「なんか怒ってたしなぁ……」  ーーそう、昨日のイヅルの態度。  かなり不機嫌で俺と目を合わせることすら嫌そうだった。  なんでだろう。俺はイヅルになにかしただろうか。そりゃずっと連絡もしなかったし、避けてはいたけれど、この間の電話ではそんな態度を微塵も見せなかったのに。  ダイチと友達になったから?  ……なぜ?  俺が急にダイチと仲良くなった事がイヅルはムカついたんだろうか?  ……にしたって意味がわからない。  まあ、なんにせよ、イヅルが俺に腹をたてている事は明白だった。それがイヅルに会うのが気まずい理由。  気持ちがすごく落ち込んで、昨日までの気持ちが嘘みたいに消えていた。  イヅルに会いたくて会いたくて  会って、話がしたくて、確かめたくて、仕方なかったのに。 ……こんなに悩んだり、またあの辛い気持ちをするこてになるのかと思うと、会いたいと思う勇気なんてでなかったんだ。

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