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心とココロ②

 10分 20分 30分……刻々と時間が過ぎていく。  ……やべぇな、過ぎてんじゃん。  待ち合わせ時間は18時30分だ。場所は神社前。俺は未だにベットの上で布団を引っ張り上げる。  もういいや……  このまま寝てしまったという事でバックれようか?  こんな気持ちでいくくらいなら、いっそ嫌われてでも今日は会わない方がいいかもしれない。  ……なんて、考えはじめたときだった。  玄関でチャイムが鳴ったんだ。 ◇  ピューピューと夏祭り特有の笛や太鼓の音が聞こえる。いつもは静かな神社に明かりが燈って、道の両側には連なる出店と、そこに並ぶ、人の列。  浴衣にうちわやわたあめを片手に走る子どもの姿をぼんやり見つめ、視線をうつして足元をみると、目に写るのは背の高い影。  迎えになんて、きてくれなくてもよかったのに……  黙々と前を歩くイヅルを見つめて、心の中で大きなため息をつく。 「……悪かったな。わざわざ迎えになんてこさせちまって」 「別に」  それでも何か話さなきゃと思い口を開くと、ぶっきらぼうな返答。 「なぁ、なんか買う?」 「……」 「奢っちゃうよ」 「いい」  前だったら、奢りだなんて言ったらすぐ食いついてきた癖に。  上の空みたいなイヅルの態度に少しの怒りと大きな悲しみを覚えて、俺はそこから口をつぐむ。 「………」 「………」  俺たちは無言のまま歩き続けた。  回りの楽しげな音楽や、笑い声とは正反対な微妙な雰囲気のまんま。  俺とイヅルの距離も微妙な空間をあけていて  たまにイヅルが振り向いてくれる事を望んでいたけれど、振り向く気配すらなく、スタスタと神社の奥へ奥へとはいっていく。  それが、この状態がどうしようもなくて、なんだかせつなくて。ただただ、イヅルにおいていかれないようにその後ろ姿に着いていったんだ。  気がつけば、賑わう屋台の列を抜けて、少し明かりが暗くなった神社の奥の砦の前。  砦までに数段ある階段。その下から3段目に無言で座るイヅル。つられるよう俺もそのとなりへと腰を降ろす。 「…………」  沈黙が続く。  正面に瞳を向ければ、明るい屋台と群がる人。かすかに聞こえる楽しげな声。  居心地の悪いこの状態から気をそらそうと、楽しげなその光景を見ながらぼーっとしてると、ふいに隣からの視線に気付く。 「?、何見てんだ?」 「別に」  それにに慌ててふりむくと、俺の視線から逃げるようにイヅルがふいっとそっぽを向く。  ……なんだよ。自分はジロジロみてたくせに。  なんなんだよ、その態度。  さっきから無視ばっか……  俺と話がしたいって言ってたじゃん  ……むかつく  言いたい事があんならさっさと言えよ!! 「おい、イヅル。お前なんか話あるって言ったじゃねぇか。早く話せよ」  イヅルのあまりの態度に苛ついて、切ない気持ちを怒りに変える。  イヅルはちらっとこちらを見て、一度大きなため息をはいてから俺を見た。 「……その前にさ」 「?」 「ヒナに……最初に、ちょっと聞きたい事があるんだけど」 「なんだよ」  視線が交差する。少しつりあがったキツめの瞳が今はなぜかせつなげに見えた。  はっきりした、いつものイヅルの話し方。真っすぐな視線にふいに俯いた。  イヅルの表情があまりに真剣だったから。 それにつられて、鼓動がドクドクと早まっていく。  ーーもう、今日は会ったときから、喉が渇いて仕方なかった。カラッからの口の中。あまりの緊張のせいで唾液ばかりが多くなる。 「おい!早く言えって……」  しばしの沈黙に耐えきれず、俺は訴えるように顔上げた。  さらりと、前髪が触れる。  いつのまにかめちゃくちゃ間近にあったイヅルの顔。 「なぁ、ヒナ」  言葉に、詰まるんだ。顔が、瞳の奥が……アツイ。 「……オマエの親友って、オレじゃねぇの?」

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