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心とココロ③

 ………はあ?  その口からでてきた予想外の言葉に唖然とした。ぽかんと、間の抜けた顔で俺はイヅルの顔を見つめていた。  それを見兼ねてか、イヅルがもう一度口を開く。 「……お前は俺の親友だよな?」  聞き間違いなんかじゃない。確かめるようなイヅルの言葉。 『親友』って……  ああ……あんときダイチに言われた、アレか? 『イヅル。俺の親友、ナオ』  気にも止めなかった、一言。  まさか……イヅルはずっとこれを気にしてたのか?    イヅルの顔は未だに不機嫌丸だしの顔だ。  まさか、怒ってる……んじゃなくて……拗ねてる? 「ぷっ」 「……なんだよ」  つい笑ってしまう。  なんだか急にイヅルがかわいく見えた。  親友って言葉に反応して、そんで機嫌悪かったって?  それってなんだ?ダイチに嫉妬してたって事なのか?  自然と顔がにやけてしまう。理由がわかった途端 今までの不快な気持ちが嘘のようだった。  自分のものを横取りされて怒る子どものようなイヅルの態度に、呆れたとか、そうゆう感情はなかった。 「もういい」  ふてくされたような横顔が、ただただ愛しくてたまらなかった。 「……なんだよ。なにがおかしいんだよ」  ムスッとしたイヅルの顔。  ……どうしよう。  理由がわからなかったさっきはあんなに怖かったのに。  今は可愛く見えて仕方がないんだ。 「なんでもねーよ」  俺たちの関係を確かめるようにいった言葉。  でもそれ以上を口にするつもりはないらしく。  笑う俺を気にしながらも、その理由を問い詰めたりはしない。  ……イヅルも、俺と同じ気持ちなんだろうか?  沈黙は答えを聞くのが怖いだけ? 「なぁ……」 「ん?」  さわさわと涼しい夜風が吹く。風になびく前髪を横に流しながら、俺は一息ついてから、イヅルに問いかける。 「お前さっき『親友』っていったよな?」 「ああ」  階段に手をつき、体ごとイヅルの方を向く。 「それ、ちげぇよ、なんか」 「え?」  困惑したようにイヅルが俺を凝視する。  俺は顔に笑みを浮かべて、イヅルの顔をじっと見つめた。 「お前は親友じゃない」 「……」  イヅルの驚いたような、少し傷ついたような顔。  それをみて感情が高まる。興奮した体が勝手に動いてしまう。  自惚れなんかじゃ、ない…… 「お前は……お前は親友じゃない。親友じゃなくて、もっと、もっと大切なやつなんだよ……!」    口にしたと同時に、俺はイヅルにタックルするように抱き付いていた。  ショックを受けたようなイヅルの顔に、言葉に、考えるより先に、心より先に体が反応したんだ。  嬉しくて嬉しくて、堪らなかった。  ……だって、ダイチとの関係に嫉妬して、自分たちの関係を確かめるなんて。  まるで恋人通しのそれだ。  腕の中で身動き一つしない体にさらに強くしがみつく。  信じられない気持ちだった。    イヅルは……イヅルも、俺の事……  ーふと顔をあげると、睫毛が触れそうなほどの至近距離にイヅルの顔がある。 「……やっと気付いたんだ」  形のいい唇がゆっくり動く。 「短い時間しかまだいないけれど、この短期間でお前の存在がすごく大きくて。俺も……俺にとっても、お前は友達より、大切だって……」  ちょうど大きな音がした。それと一緒に手拍子と階段の下から軽快な音楽。盆踊りでもはじめるのだろうか。色とりどりの浴衣をきた老若男女が楽しげに笑い合う、声。  ……そんな雰囲気の中なのに。イヅルの言葉に、イヅルの真剣な顔に、本当の心の声に胸が熱くなって やけるようで  ……涙がでそうだった

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