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心とココロ④
どんどんと響く太鼓の音。
それよりも大きな音と振動。
ドクンドクンと脈をうつ、イヅルと俺の2つの鼓動が体中に伝わる。
循環する血液が懸命に流れて、イヅルのソレと混ざり合おうとしているように、異なる2つの鼓動が、負けることなく響きあう。
俺の両腕はイヅルの背中で交差する。がっしりとはなすことなく、しがみつくように。
いつのまにか俺の背中にもイヅルの腕がまわっていて、まるで彼女にするみたいに頭を何度も撫でられる。
それになぜか胸があつくなって、ぶわっと視界が滲んでくる。
……なんだよ、バカ
お前のが女子みたいな事したくせに。
お前が俺に嫉妬なんかしてたくせに。
お前のが…………
なのに。
上気した頬、上擦る声に、はちきれそうな胸の高鳴り。
……いつのまにか、俺のがこんなんなってる。
畜生。
恥ずかしい。
でも……………大好きだ
好きだ。
好きだから、仕方ないんだ。
……イヅルの前だともう俺は、いつもの自分ではいられない。
「……なぁヒナ」
「ん?」
しばらくそのまま抱き合っていると、ふとイヅルが口を開く。頭を優しく撫でられて、子ども扱いされてるみたいなのになんだかとても心地が良かった。
「……この前……ごめんな」
「……」
「確かめたかった、ってのはさ、変な意味じゃなくて、俺がヒナを好きなのか、確かめたかったんだ。でも、よく考えてみたらそれも失礼だよな。ごめん」
その一言で、あの日のイヅルの姿や、触れたくちびるの感触を思い出して、さらに鼓動は強く響きだす。
イヅルが急にそんな事をいうもんだから、落ち着き始めてた心が完璧に乱された。
ああ……もうっ
俺はイヅルにしがみついたまま、顔だけをあげる。瞳の中にうつる自分の顔。
「……」
「……もう一回、してもいい?」
「また、確かめるのかよ?」
イヅルは挑発するように言った俺の瞳を少し驚いたように見てから、ふっととても優しい顔をして笑った。
「んなわけないじゃん。もう分かってる……」
唇にあたる柔らかい感触に目を閉じる。
……幸せだ
屋台の光が暗くなった。少しだけ寒くなった風に吹かれた前髪を、イヅルの肩におしつける。
そこから俺たちはしばらく喋らなかった。
ただ静かに2人だけの時間を共有する。それだけで充分だった。
通じあった心とココロ。
もう何もいらなかった。
ーーただ
ただ、このままこの幸せが夢じゃありませんように……って
薄く開けた瞳に写った月をみて
強く、願ったんだ。
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