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満開①

 ピーーー  体育館内に響き渡る笛の音と、それと共に聞こえる甲高い黄色い声援。 「キャーッ!がんばれ」 「イヅルくんー!かっこいーっ」  サーブラインに立つイヅルのまぶしい姿を、俺は2階席の最前列から乗り出すように見つめていた。  ーーここは市立体育館  当然のように県大会まで勝ち進んだバレー部の応援に、うちの学校は臨時休校なんかして、生徒全員で応援にきているんだ。  中でもうちのクラスの女子なんか絶叫だ。だって、レギュラー6人の中で唯一、一年レギュラーなのはイヅル一人なんだから。  普段一緒に勉強してるやつがこんな眩しい場所で皆から注目を浴びてるなんて。そりゃ、あんまり仲良くなかったとしても応援したくなるもんだろ?  カンカンバンバン、隣で応援するヤツらが叩く雑誌やペットボトルのうるさい音。だけど、それすら俺にとっては嬉しい応援だ。  もっと応援して。もっと励ましてやってほしい。  俺の代わりに、もっとあいつを喜ばせてやって。  イヅル頑張れ!かっこいい!……なんて、口がさけても言えないから。  俺はそんな事を思いつつ、イヅルがバシッとスパイクを決めた瞬間、こっそり両手でガッツポーズする。  そうして試合再開のホイッスルが鳴ると、前に後ろに激しく動くイヅルの姿をじっと見つめた。  コートにいるのは当然こっちに6人、相手チームに6人だ。なのになんでだろう。イヅルだけにスポットライトが当たってるみたいだった。  笑う顔に飛び散る汗、動く度に手足に浮き出る筋肉のライン。そのなにもかもがまぶしくて、かっこよくて……  本当はみんなに大声で叫びたい気分だった。  こいつは俺の恋人なんだ!俺のなんだ!って。  隣で馬鹿みたいに騒ぐクラスのやつにも、後ろからきゃーきゃーうるさいどっかの学校の女子にも、 試合会場をしきる審判や管理者にも。  ……みんなに言いふらしてやりたい。  そう思って、ふと大きな深呼吸。  そうして興奮する心を落ち着かせる。  絶対に言えないし、どうしようもない  ……このもどかしい思いを。  気付けば大きな歓声がした。コートをみると、イヅルが隣のやつらとハイタッチ。状況から察するに、単独でブロックに成功したようだ。  すでにうちの学校がだいぶリードをとっていて。 焦った相手チームからタイムがでる。コートの隅へもどる途中、ふとイヅルが上を向いた。  キョロキョロしてから、なにか大切なモノでもみつけたかのようにニコリと笑い、そのままミーティングに向かう。 「やだー!!今、イヅルくん、コッチみてたしーっ」 「いや、ちげぇよ。俺らの方みたんだろ?」 「ちがうって!あたしらの方だったよ?」  ギャーギャー盛り上がる周りの声なんて耳に入らなかった。  ……イヅルは俺を見てたんだ。  まるで心臓を射抜かれたかのように、キュンと音がした。  少女漫画みたいだ。  ……びっくりする。  まさか自分がこんなになってしまうなんて。  イヅルがミーティング中に汗をふく姿を、水を飲む姿を阿保みたいに眺めている自分に呆れる。  しかもこれは無意識だ。そうとう重傷。  今更ながらにどれだけあいつに惚れ込んでしまったかを実感する。

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