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all for one ①
さわさわと吹く秋風が強くなった今日このごろ。
教室の左側の壁にかけられているカレンダーを見ると、一週間後に体育祭と印されている。
今、うちのクラスはその練習に夢中だ。
俺は中学時代に少しだけやってたテニスで参加予定。運動部は部活とは別の競技にするという規定があるから、イヅルはバスケ、南は卓球。
放課後のこる熱心なやつらにつきあって、暇人な俺も練習に参加する。そんな状態の日々が続いてた。
ーーだってイヅルは今も部活で必死。
あいつがバスケ組のやつらと練習なんてしてるとこなんて1、2回見たことない。
そんな時間がない中でイヅルとゆっくり話す時間なんて持てないだろうから。
悶々と欲求ばかりが貯まっていく。
イヅルと抱き合いたいし、キスしたいけれど。
なかなか口にだしてそんなことを話せる時間がない。
ましてや昼休みに飯食いながら話す内容でもないし、誰かにそんな相談できるわけがない。
だから体育祭が終わるまではこれに集中することにした。
もうくだらない煩悩は捨てて、『スポーツの秋を存分に楽しもうぜ!』なんて南の言葉にノってみる。
放課後の練習はスポコンのような熱血さはなくて、あくまで俺はテニスチームは俺たちなりに楽しくテニスをして勝とうという、ざっくりとしたチーム目標のもと、練習を重ねていた。
「くらえ!俺のミラクルサーブッ」
「ぶッ!ぜんっぜんとどかねぇよ、佐々木!」
「きしょー!」
「今度は俺の番だぜ!ほら、三日月サーっブ!」
「おお!?すっげぇ早ぇ!日向!いいかもよ、それ!」
「マジで!?じゃー俺のプレイリストん中いれとくわ」
「おっし!次は俺、ダッシュサーブだッ」
「よしこいっ」
汗をかきながら、テニスコートの周りを走りまくる。
コートは本来のテニス部が使用してるから、俺たちは学校じゃイメトレが主ってわけで。たまにテニス部のやつらの情けで端の一角を借りたりして練習していた。
お互いの技をみせあい、評価しあい、試合にそなえるとか、ちょっと頑張ってる感じしない?
俺の三日月サーブはイヅルのサーブを真似したものだった。
あんなキレイなサーブのフォーム、バレーだけじゃなくて、テニスでも意識するだけでちがうんじゃないかなって思った。
前にイヅルにどうやって打ってんのか聞いてみたことがあったから。
『背筋を思い切りそって、そのバネの反動を打ち込むサーブにのせる』
とか。口でいうのは簡単だけど、実際にやってみるとなかなか上手くはいかなかった。でも、できたらちょっとかっこいいかな、なんて。
そんなこんなで、いつのまにやら体育祭当日になった。日頃の練習の成果か、うちのチームはかなり好調だった。
チームといっても個人戦。一人一人の実力がものをいう。
俺は自分で思ってたより、テニスの才能があったのかなと自画自賛するくらい、対戦相手の隙をついたプレイで全勝していた。
ほかのヤツらも居残り練習の成果なのか、かなりいい調子で、気付けば決勝戦まで勝ちのぼってたんだ。
決勝の試合開始時間まではまだ間があって、その間、俺たちはほかのやつらの状況を見にでかけた。
バレーは……ああ。惨敗だ。バトもダメ。卓球……一回戦敗退じゃん。バスケは……
「……あ。バスケって今、決勝じゃね?」
川上の言葉に内心ドキリとした。バスケチームにはイヅルがいる……
「マジで?!あ、ほんとだ。バスケって、佐藤と山田と、イヅルもだよな?みんな背ぇ高いし運動班だから期待できんじゃね?まだ時間あるし、応援しにいくか」
佐々木の言葉に小さくうなづきながら、胸の中では大きくあいうち。
「よし、んじゃいこ」
「?どうした日向。なんか急に静かじゃね?」
「べ、別に」
俺は興奮する気持ちを必死で隠して、バスケ会場に向かっていった。
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