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all for one⑥☆
イヅルもオレを求めてくれている……
耳から入る声に
体中から感じる体温に
優しく触れる唇に
すべてから熱さを感じた。
お互いがお互いの事を好きで、求めあっていて、それでやっと思い切り気持ちをぶつけ合えるチャンスに巡り逢えたんだ。
待たされた時間の長さだけ、恋しくて愛しくて、堪らない。
「……っ」
余裕なんかあるはずがない。
湿った衣服を脱ぎ捨てて、夢中で目の前の身体にしがみついた。
くっきりとでた筋肉のラインに指を這わせて、確かめるように唇を合わせてみる。
「ヒナ」
う、と小さく呻いて、軽く震えるイヅルはなんて可愛いんだろう。もっとその声が聞きたくて、自分からのやつ股間に手をのばした。イヅルの手も俺のものに伸びて来る。
触れられた瞬間、頭のてっぺんまでかけぬける電流のような激しい刺激。
それはマニキュアの塗られた綺麗な爪でも、細くて華奢な指先でもないけれど。
きっとどんな綺麗な人に触られたときより気持ちいいであろう、快感。
……もう、無我夢中だった。
みんなの憧れる存在。
誰からも好かれて、羨望される存在。
そんな、ずっと求めていた相手の心が、身体がここにあるんだ。
ーー今やっと、この手の中に。
「ヒナ?」
じっと見つめていたイヅルの顔が俺の視線に気づいた。
張り裂けそうに胸が詰まる思いを、叫びたくなるような激しい感情を……ずっとずっと我慢してきた。
イヅルとこんなふうになれるなんて、夢のようだ。本当に好きで好きでたまらない。
熱に浮かされたような瞳で見つめる俺の想いが通じたのか、さっきより幾分手荒に舌が、指が、身体のあちこちを刺激してくる。
俺の手はいまだ奴の中心を握っていて、そこが痛いくらいに張り詰めてきたことがわかった時、自分のものも大きく跳ね上がった。
「…すげぇ元気じゃん」
「お前だって」
「……そりゃ、全然してなかったから……」
「俺も」
そんな言葉を聞いて、ふと、イヅルはすげぇモテるんだよな、だなんて。そんな当たり前の事を今更ながらに思い出した。
一体今までどんな彼女がいて、どんな恋愛をしてきたんだろうか。
これが初めてじゃなさそうだけれど。じゃあ一体、どんなかわいい、綺麗な人が相手だったんだろう。どんな彼女を選んで好きになったんだろうか?
……そんなことを考えるとかすかに嫉妬心が沸き上がる。またそれと一緒に、本当に俺なんかでいいのだろうかという、不安も。
「なぁ……イヅル」
「ん?」
荒くなる息を抑えながら、刺激を与える指の動きを少し制止する。
「そんな久しぶりなのに……俺なんかで良かったのか?」
口にしてから気がつく。
なんて馬鹿な事を聞いてるんだ、俺は。
イヅルが俺を好きだって、抱きたいって言ってくれたからこうなっているのに。
何をまた確認なんかしてんだよ。
たとえ今だけの感情だとしても、こんな幸せな事はないのに。
自分から否定するようなことを言ってどうするんだ。
自己嫌悪しながら顔をあげると、目の前にあんのは真顔のイヅル。
「……なんでそんなこと聞くんだよ?俺は、ヒナを抱きたいっつってンのに。そんなこと言われたら普通に傷つくわ」
「……イヅル」
少し怒ったような口調に、唇を合わせる。
優しくそっと触れるだけのキスをくり返して、瞳をあける。
イヅルの頭に両腕をまわして、鼻先が触れる距離で近づいた。
「……ごめん。なんか急に俺なんかでよかったのかって不安になって……だってお前、モテるし、綺麗な彼女もたくさんいただろうし……」
隠さずにストレートに自分の気持ちをイヅルに伝える。
ふと瞳をあわすと、イヅルはいつもの優しい瞳に戻っていた。
「……ヒナが思うほどモテたりしない。彼女いたのは中3んときの3ヶ月だけ。一人しか付き合ったことないし、最後までしたこともない。これでいい?」
そのままイヅルの胸に強い力で引き寄せられる。
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