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1対2①

 シャンシャンと鳴り響く鈴の音に、いつのまにか飾り付けられたイルミネーション。  街中がなぜだかいつもより明るくみえるのは、どの店からも軽快に流れる音楽のせいだろう。  11月も終わりに近づき街中が少し早いクリスマスカラーに染められている。  俺は鮮やかに飾り付けられた木々にかかる、赤と緑のテープの波を見つめながらゆっくり歩く。  時折、ビューと冷たい風が吹いて、巻きつけたマフラーと帽子を抑えながら空を見上げた。 「もうすっかり冬なんだもんなー」  ……早いもんだな  高校にあがって、はじめてのクリスマスだ。気づけばあっとゆうまに半年がたっていた。  イヅルと出逢ってから、もう半年。  そんなことを考えていると、いろんな出来事が頭を巡る。  はじめて話した入学式、はじめてアイツのバレーをみたときの感動、はじめて喧嘩して本音を語った日、そして、告白した……その日。  感慨耽って、はっと気付く。  ……何を感傷的になってんだ、俺は  寒い季節の冷たい風に、心まで淋しい気分にさせられる。  ーー今、自分はすごく幸せだと思う。  大切な家族がいて、楽しい学校があって、そんで……イヅルがいる。  でも、たとえ満たされた心でも、やっぱり切り裂くような冬の寒さは身を凍えさせるんだ。  ……寂しい 「あーあ」  こんな派手なイルミネーションをみて、淋しくなる理由はただ一つ。  イヅルに会えない。  ……ただ、それだけ。 ◇  あのあと、バレー部は県大会を当然のように勝ち進み続けた。  全国のその舞台でもまわりの強豪に負けずおとらず、あっとゆうまにベスト4に入り込んで、結局今年は優勝とまではいかなかったけど、出場メンバーの知名度は一気にあがった。  中でもイヅルは中学の時から注目を浴びていたんだ。今月発売されたバレー専門雑誌のトップを飾るのも、納得がいく。  そのおかげで、学校の中でだけじゃなく、街を歩くだけでみんなの視線を浴びるようになってしまったんだ。 「あの人、こないだテレビにでてたよね?」 「あ、あのうまい人?しかもすごくかっこよかったよね!」  全国の高校バレー中継だけならまだしも、しばらく地方テレビのニュースに引っ張りだこになり、その上インタビューなんかも受けてしまったせいで、ファーストフードでハンバーガーを食べるだけでも、まるで芸能人並の注目だ。 『こないだテレビでやってたばっかだし、雑誌なんかにのせられたから仕方ねぇよ。少したてばほとぼりも冷めるって』  当の本人はあまり気にしている様子もなくて、前にも増して近寄ってくるたくさんの女子や、はやしたてる周りの奴らにも笑顔で答えている。  ……けど 「……なんか、ムカつくんだよな……」  暗い夜空をみて、ハァとため息がでる。  ふわふわのぼる白い息をみて、ふと立ち止まった。  ーーそう、俺が。  俺が、イライラしてしまう。  笑顔で答えるイヅル。  困った顔のイヅル。  バレーをするイヅル。  本人さえ気付いていない、両手首を頭の後ろで組むささいな癖までもが。  テレビで、雑誌で、目の前で。目にするたびに沸き上がる焦燥感。   ……知られたくない。  俺のアイツが、俺だけのイヅルが、とられてしまうような……不安。 「……何考えてんだ……俺」  こんなに自分が独占欲の強い人間だったなんて、今まで知らなかった。

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