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1対2④
◇
「参加するって?」
昼休みに弁当を食う俺の前にパンをかかえながら現れた南。
「え?」
「イヅルハルカ」
隣で飯を食う斉藤の席を半分陣取って、無理矢理隣に座り込む。どさどさっと机に置かれたパン。
「礼だ日向。好きなの1個やるよ」
「こんなにあんのに1個かよ!……ってか、話見えないんだけど、なんの礼?」
すでに弁当を食い終わった俺は、目の前に置かれたパンを吟味しながら南に問う。
「だからイヅルハルカの」
「イヅル?イヅルがなに?」
見つけ出した好みのたまごパン一個の封をあけて、南の顔を見つめる。
イヅルなら今日も昼休みは部活のレギュラー全員でのミーティングに参加中だ。
「説得してくれたんだろ?」
「は?なにを」
早速パンをほうばる俺に、すでに3つ目のパンに手をだした南が機嫌よさそうに笑う。
「クリスマスパーティだよ!さっきイヅルハルカにいわれたぜ!でるってさ」
「え」
思わずパンをもつ手がとまる。
「マジよかったよー!イヅルハルカがいくならいくっつー女子とか多くてさ。アイツいかなくなったらどう……」
「イヅルがいくって?」
嬉しそうに話す南の言葉を途中で制し、逆に問い返す。
意味がわからない。さっきまであんな嫌がってたのに。
「え?……ああ!お前がいってくれたんじゃねぇの?さっきミーティングいく前に声かけられてさ、お前もイヅルハルカも参加するっつってたぞ?」
「あ、ああ……そう」
パンをほうばりながら首を傾げる南の言葉にあいまいに頷く。
……なんだよ
『ヒナはそれでいいんだ?』
イヅルの頬が赤く染まったように見えた、先ほどの光景を思い出す。
変なこというから、勘違いするようなこというから、つい期待してしまっていたんだ。
もしかしてなんか考えてくれてたのか……なんて馬鹿な想像をしてしまった自分が恥ずかしい。耳の方まで熱くなる。
「ん?日向どうかしたか?顔赤いぜ?」
「……んでもねぇよ。それより南、お前のパン、斉藤が一個食ってるぜ?」
「なに?!あーっ!斉藤ッ!お前ソレ、俺の!!」
「お前、話ばっかして食わねえからいらねぇのかと思って」
「マジかよ?!今すぐ返せッ!」
ギャーギャーとパンの取り合いをする南と斉藤に苦笑しつつ、俺は席をたった。
そんな話をした日からあっというまに時間は過ぎて12月24日。南主催のクリスマスパーティ当日だ。
会場はうちのクラスで唯一の一人暮しである斉藤のアパート。
もっとも当の本人は彼女と約束があるって、部屋だけ貸してくれたらしいけど。
みんなで買い物してから、料理して、煮込んでる間にゲームをしたり。そのうちコントローラーをまわしながら、勝負にもえる。
あの日から特に今日の事について話はしなかったけど、今日はイヅルも普通に参加してた。
黒いニット帽を深めにかぶって、少し使いふるしたようなジーンズにシンプルなカットソーのイヅルの私服をみるだけで、なぜかドキドキしてしまう。
……ばっかだな、俺
ふいっと顔を反らして、ゲームに没頭しようとする。立って毎日見てる姿なのに、私服姿なんて久しぶりで。それだけで反応しちまうなんて。
ちらりと再び盗み見ると、隣の会田と話す姿が視界にうつる。
俺の視線に気付いたイヅルの唇が、小さく、何見てんだよと動いて、優しく微笑んだ。
……嬉しい。
イヅルとそうゆう関係である事が。
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