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出会いと別れ②

「……まぁ、決まっちまったもんは仕方ねぇけどな」  口にして、諦めた。  仕方ない。ここで何を言おうが変わるわけでもないし。 「イヅル!南!いこーぜ」  まだじっとソレを見ているイヅルと、あとを追っかけてくる南を振り返らず、目的地の2組へと向かう。  途中、下駄箱で小走りで走ってきたイヅルが追い付いた。  あくまで自然なそぶりで近づいてきて、ボソッと耳元で言った台詞。 「……休み時間、会いいくから」  顔は下駄箱から靴をとりだしながら、こっそりと呟かれて。 「ん?どーした、日向。おいてくぞ」 「……んでもねぇよ」  微かに赤くなった頬を南に気付かれないように隠しながら、教室までの道を歩いた。  ……そういえば去年、イヅルと初めて会ったのも入学式だったな。  二人で式に遅刻して、俺だけ担当教師に説教されたっけ……  あのときからイヅルと仲良くなって、それから今までずっと一緒にいた。  ……懐かしい。たったの一年だけれど、いろいろなことがあった。  あれからもう、一年も経ったんだ。  そんな事を思い出して歩いていたら、いつの間にか1組の廊下前で。イヅルたちが立ち止まる。 「じゃーな、日向!また後で」 「おー」  元気よく手をふる南に小さくふりかえし、イヅルとは軽く目くばせ。そのまま2組の教室へと向かう。 つってもすぐ隣。歩いて数歩の距離だ。  気分一転。  いつまでもくよくよしてられるか。  新しいクラスは最初が肝心だし。早く気があうやつ見つけて、それなりの時間を過ごしたい。  そんな思いで2組のドアを開けた。教室の中にいたのはまだ数人。黒板に書いてあった通りの席へと向かう。 「おはよう」 「…あ、おはよ」  腰をおろそうとしてふと目が合った、俺の真後ろの席のヤツ。  初対面だけど、なんか見たことがあるような顔に挨拶をかえして席につく。  ……それにしても  辺りをざっと見渡しても、知ってるヤツはまだいなかった。なんだか俺一人だけが仲間外れになったような、疎外感。 「……ふぅ」  それになんとなく緊張していたのか。ほっとしたような溜息が自然とでた。教室の中は知らないもの通しが集まった時の独特な空気で、この微妙な状態がなんだか居心地悪い。  かばんを片付け、スマホをとりだした。 『今のところ誰も知ってるヤツいないんだけど、そっちはどう?』  簡単な2行の文章を打ち込んで、送信ボタンを押そうとした瞬間。 「『誰も知ってるヤツいないんだけど、そっちはどう?』……じゃあ、俺とつるむ?」  後ろから無遠慮な声がした。  その声にびっくりしてとっさに後ろをふりむくとさっき挨拶をした俺の真後ろの席の男がすぐ近くにいて。ソイツが席から乗り出すようにして俺の携帯を覗いていた。  隠すように慌てて携帯を折りたたみ、そいつを睨みつける。 「あ、のさぁ、人の携帯のぞき見するなんてイイ趣味……」 「のぞき見なんかしてないけど。ただ座ってたら見えただけ」  嘘つけ。乗り出すように見てたの知っているぞ。 「いや、だからって……」 「あんた『ヒナ』?」  言い返そうとした矢先に突然そいつから投げ出された言葉に俺はア然とする。  あれ?『ヒナ』って……言ったよな、コイツ。  たいしたことじゃない。だけど……  俺のことを『ヒナ』って呼ぶヤツはイヅルだけだ。  ヒナと呼ばれただけなのに、なぜか悪いコトをしたあとのように心臓の鼓動がバクバクと速まって驚きを隠せない。  一瞬にして固まる俺をみて目の前のヤツはおかしそうに笑っていて。 「当たり……だろ?」 「……え、ああ」  もう一度確かめられて、素直に頷く。  疑問だらけで不信感をいだく俺とは逆にソイツはうれしそうにまた笑った。 「そっかー!お前が『ヒナ』かぁー!俺、タキ。バレー部ね」 「……」  そこまで言われてもいまいちよくわからない。  今だに訳がわからない様子の俺をみて、『タキ』が付け加える。

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