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出会いと別れ④

「え?タキと同じクラス?」 「ああ」  昼休み。久しぶりに学食でイヅルと待ち合わせて、一緒についてきた南とトレイを持って注文に向かった。イヅルは飲み物担当だ。 「そっかー!タキと一緒かぁ。いいなぁ日向!タキもさ、すっげーうまいんだ、バレー!!アイツはトスがすげーの!今は3年の先輩がレギュラーだけど、アイツ今年からレギュラー入りだと思うぜ」 「ふーん。そうかよ」  注文したミートソースにチーズを振りかけながら南が熱く語る。俺はメニューを見つめながら、軽く頷いた。  ……そんなにうまいんだ。  背も高かったし、なんだか器用そうだったし。 なんとなくわかる気がする。  南の隣で会計を済ませながら、ふーんと軽く相槌して、注文したラーメンにコショウをかける。  タキの武勇伝を語り始めた南は、その話にあまり興味を示さない俺の反応がなぜか南は面白くないらしく、トレイを持ってテーブルへと向かう途中、膨れっ面をする。 「なんだよ日向!ノってこいよな!」 「うん。すげーな」 「それだけかよ!!」  南のツッコミに軽く笑って、4人がけのテーブルに座った。  ラーメンが伸びないうちにとテーブルに置くやいなや、食べ始めようとするが再び南の声にさえぎられて仕方なく話にのってやる。 「別に俺、バレーにそんな興味ないんだけどなー」 「なんだよそれ!お前去年の大会ん時、すっげーはしゃいでたじゃんよ!」 「あー……あれは……」  無視して箸を進めようとしてふと止まる。  去年の大会……全国にみんなで応援にいったときだ。3年の中に一人だけ混ざってたヤツ、俺はソイツを見ていただけであって。単にイヅルがでていたからであって。  イヅルが出てなきゃ別にバレーというスポーツ自体がそんなに好きってわけじゃない。タキがバレーがうまくたって、俺にはなんら関係ないし。  そこまで思って言葉につまる俺に、まいっかと笑う南の顔。 「まぁ、でも、タキはイイヤツだぜ?よかったな日向!」 「ああ。あいつならなんか仲良くなれそうな感じがするんだよな」  フォークを手にもって、ようやく食べ始めようとする南に連動して、俺も割り箸を握って麺を口に運び始める。  ーーようやく食べれると大きな口をあけた瞬間 「あ!でも日向。タキはイヅルのライバルだから」  南の言葉に口から麺が零れ落ちた。 「?なんだソレ」 「あいつはさ、ホントはアタッカーだったんだよ。でもさ、今うちにはイヅルがいるだろ?だから、ほら……」  な?と南が俺をみる。 「イヅルのこと、よく思ってないってことか?」 「うーん。表面上は仲いいけどな。内心どう思ってるかまではわかんねぇ。まぁでも、タキも今年から多分レギュラーだし、アタッカーじゃねぇにしろ試合でてるから、そんな気にしてねぇかもな」 「ふーん……」  なんだか聞かなきゃよかったようなバレー部の内部事情を聞いて、ちょっと複雑な気持ちになる。  そこにちょうどイヅルがきた。片手に3本ペットボトルを抱えて、もう片方の手には紙袋。 「わりっ!途中でつかまって遅くなった!」 「おっせぇよ、イヅル。南なんてもう食っちまたぜ?」 「いやさ、コーチにつかまってさ。コレ見てけって引き止められて。なんとかごまかしてうちでみます!!って巻いてきた」  ははっと笑いながら、イヅルが俺の隣に腰をおろす。冷め切ってしまったカレーに手をのばすヤツの抱える紙袋をもってやる。  中にはいってたのは3枚のDVD。 「?なんのDVDだ?」 「なんか今度の練習試合のヤツらのゲームだってさ」 「へぇ~……そいや今度やるヤツラって全国にもでてたもんな!ふ~ん……なんかきになるなぁ~!俺も見たい!今日イヅルの部屋いってもいいか?」 「え」  南の言葉に思わず声がでてしまった。 だって今日はなんとなくイヅルと話がしたかったから。  学校の後はイヅルの部屋に行こうと思ってたのに……約束してたわけじゃないけど。  なんだか寂しい気分だった。突然のクラスがえで離れ離れだし、これからもそんなに頻繁に会えないのかと思うと。 「日向?なんか用でもあったんか?」 「あ、いや、そーじゃなくて……」  隣でカレーを口に運ぶイヅルを見つめると、顔をあげて、どうした?って感じの顔をして、俺の視線に気づいたのか口を開いた。 「あ……あ!そうだ南!今日はヒナと先約なんだよ」 「じゃ、俺もいってもいいか?」 「……いいのか?オマエの苦手な数学の基礎講座だぜ?」 「遠慮しとく!」  はははと笑うイヅルに俺は安堵の息をつく。 それとともに、アイコンタクトで通じてくれた、そのことに喜びを感じて自然と笑顔がでる。 「?日向、お前、そんなに数学好きなんか?」 「あ?ああ!」 「はは」  南の言葉に俺は大げさに返事をして、そうして隣で笑うそいつの腹を軽く肘で突いた。

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