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伝えたい思い⑤☆

 イヅルの舌が生き物のように、感じる部分を湿らせていって。  ……嫌なのに。このままじゃ、嫌なのに。  なのにそれを……その行為を、どこかで受け入れてしまっている自分がいて。 「……ッ、」  ぬめった指がゆっくり進入してくる。はっきり拒否もできない、どうにもならない思いで、イヅルの頭を抱き締めた。 「……?」  瞬間。そこからピタリとイヅルの動きが止まった。 「イヅル……?」  指をソコに突っ込まれたままで、そのまま言葉も発せず、止まっている。なんだか恥ずかしいやら、もどかしいやらで、どうにもいたたまれない。  ……どうにかしてほしい。抜くならさっさと抜いてくれ。 「イヅ……「……ヒナ」  下半身がジンジンしてたまらない。  こんな状況なのに、こんなことでつい腰を動かしてしまいたくなる衝動を必死で押さえ込んでいると、イヅルがやっと口を開いた。 「……タキにもそんな顔するのか?」 「……ッ」  ぼそりと呟くように聞こえた言葉。  どこか冷めたようなイヅルの瞳と目があって。その瞬間、身体の熱が一気に冷めた。  ……タキ?タキにもって……  なんだよ……どうゆうことだよ  自然と身体が震えた。どうにもならない気持ちが、思いが、フツフツと湧き上がってくる。  まだダメなのか?まだ足りないのか??  何度も言ったじゃないか。まだ……信じてくれないのか?  俺はお前が好きだって……  恥も何もかも捨てて、決死の思いで言ったって言うのに……! 「……ッ」  思った瞬間とまらなかった。  力の限り両手でイヅルを押しのけて、乱れた息を整える。でもいまだ無表情のままのイヅルの顔がそこにはあって……ソレが悔しくて、イラついて。  そばにあったクッションや、脱がされた服を手当たりしだいに投げつけた。  やがて手につくものはなくなって、そのまま荒い息だけをはき続ける俺に、ようやくイヅルの戸惑ったような声がした。 「……おい、ヒナ……」 「んだよ……ふざけんなよ、チキショー……!」  困ったような声に少しだけ安心して、そのままの気持ちを俯きながら吐き出した。 「お前……俺をなんだと思ってるんだよ……!タキがどうだとか、誰でもいいとか……!そんな風に思ってたのかよ!」 「ヒナ……」  呟きのようなイヅルの小さな声が聞こえて。  ……もう、どう思われてもいいと思ったんだ。  女々しい思いや嫉妬や不安。全部隠しておきたかったけど、そんなこともうどうでもいい。  どうせ誤解されているなら、このまま誤解されたままなら。本当の気持ちを伝えて、嫌われた方がいいと思った。  決死の思いで俯きながら声をはりあげる。  イヅルとは向き合っているけれど、視線は床に落としていた。顔を見て伝える勇気まではなかったんだ。膝の上で握り締めた拳が自然と震えた。 「俺は……俺はなぁ……!お前だから好きなんだよ!お前じゃなきゃ、ダメなんだよ!お前以外はいらないんだよ!!  だから……不安だったんだ。お前が……お前の本当の気持ちがわからなくて。本当に俺のことを好きでいてくれてるのかって……わからなくて。周りに嫉妬して……そんな風になっていくのがすげー自分でも嫌で……でも、どうにもならなくて……」  ずっとずっと貯めてきたこと、思い続けてきたことを一気に吐き出した。  怒鳴るように感情に任せて訴えてきた言葉も、だんだん落ち着きを増してきて、次第に自分で何を言いたいのかわからなくなってくる。    一体今、イヅルはどんな顔をしているんだろうか。俺のことをどう思っているんだろうか? 「あー……もう……ッ!……なに言ってんだ、俺……」  一人で必死になって、まくしたてて馬鹿みたいだ。プライドもなにもあったもんじゃない。  ……でも 「……お前が……好きなんだよ」  どうにもならない思いでもう一度呟いた一言。  それをきっかけにどんどん言いたかった言葉が滑り落ちてくる。 「俺は……俺は!イヅルが好きなんだよ。お前が一番なんだ。……だから、お前にも一番に見てほしい、なんて……そんなことばかり思っちまって。 だから……それでえっと……」  くしゃくしゃに頭を掻き毟ってからしばしの沈黙の後、そっとその手の上から包み込むようにイヅルの手が重なってきた。

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