113 / 120
不確かな約束①
雲ひとつない晴天。
少しだけ冷たい風が頬を撫でる。
非常口のドアをあけて、そこから空を仰いだ。
試合開始まであと5分。
……少しの緊張と、興奮。
大きく息を吸った。
胸に広がる冷たい空気が自然と力が入っていた身体をほぐしてくれる。
目の前には雲一つない、空。
……こんな晴れた日はアイツの顔が頭に浮かぶ。
裏のない笑顔。
見つめる視線。
『お前とずっと……一緒にいたい』
今でもずっと胸の奥を支配するあいつの言葉。
「イヅル!そろそろいこーぜ」
チームメートに肩を叩かれてスポットライトの光の中心へと歩き出す。
まぶしい光に思わず目を細める。
その細めた瞳の先に
満員の観客席の先に
俺を見つめるあいつの姿が映る。
ーー幻想だ
わかっているのに。
それでも無意識に視線を泳がせる。
探さずにはいられない。
どんな明るい光よりも
どんな盛大な声援よりも
俺は……
『お前はずっと俺にとってHEROだからな』
……あの光が恋しくてたまらないんだ。
ともだちにシェアしよう!