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第4話

「それはわかってます。でも今日はとりあえず行きますよ。明日は休みだから、美味しいもの作ってあげますから。」 「晃がそう言うなら、仕方ないから行くか。」 弟の手料理で釣られる兄もどうかと思うが、この4年でどうやら俺の作るご飯をお気に召して頂けたようで、面倒なことを避けたがりの兄貴にとって、この言葉が一番効果がある。 本当なら家庭的で世話焼きな旦那か彼氏でも見つけてくれりゃ、俺の負担も減るんだが、なかなかそうはいかないらしい。 同性相手というのも大変なんだな。 会長の指定された場所は全個室の小料理屋。 俺達が着くと店員に案内された部屋へと向かう。 少しして、失礼しますという店員の声と共に戸が開いた。 「よう、二人とも元気か?」 会長であり、俺たちの祖父でもある一人の男性とその後ろから祖母が入ってきた。 特に決まった会社の用事でなければ月一で開かれる会長と会長婦人の会食ーーーいわゆる、これは会社関係ではない家族同士のお食事会だ。 会社関係なら、会長の秘書が来るからな。 「元気です。会長もお変わりなくて何よりです。」 何も答えない兄貴の代わりに答える俺。 兄貴は家族での食事会というのがわかっているからか、頬杖ついて仏頂面。 「ははは、透は毎回嫌そうな顔をするなあ。」 兄貴の態度を咎めることなく、楽しそうに笑いながら席につく。 コースで予約を取っていたため、適度に料理が運ばれてくる。 兄貴と祖父はお酒を飲みながら、祖母はノンアルコールを飲みながら、近況報告をしていく。俺は帰りの運転があるから、もちろんお茶を飲んでいる。 「で、透。本題だかな、」 「俺は結婚なんてしませんよ。というか、ご存知かと思いますができません。」 兄貴は家族や友人には同性愛者だとは隠していない。さすがに社内では誰一人知らないが。 「それは知っている。だが、お前も今年35だ。そろそろどうにかしないと、毎回断りきれなくなるぞ。」 「ーーー・・・・・・それは、わかってますけど。」 どちらかというと、自分本位で自由が好きな兄貴は特定の恋人などあまり作りたがらない。たとえ、同性愛者でなくても結婚はしたくないらしい。 「そこでな、透。」 「はい?」 真剣な眼差しの祖父が一旦俺を見て、その後、兄貴の方を見る。 「結婚したくないのはわかったから、この際、偽装でもいいから結婚したことにしたらいいんではないかと思ってな。」 「「はい?」」 思わず俺も反応してしまい、二人同時に声が出た。 「実は私達も老い先短いからと、終活をしていたら、こんなものを見つけてしまってね。」 祖母が一枚の写真をテーブルに置く。

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