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第7話 初めての快楽
部屋につき、インターホンを鳴らすと「入ってきていいよ。」とモニター越しに声が聞こえた。
こんな夜に鍵開けてるとか、不用心すぎんだろ。
玄関を開けて部屋に入るとリビングのソファで部屋着に着替えた兄貴がワインを開けて飲んでいる。
さっきも散々飲んでたくせにまだ飲み足りないのかよ。
酒好き、俺様、結婚願望なくて恋人もいらない、家のことを何もしない。
ホント社内全員に憧れの社長は本当はこんなクズですよ、と教えてやりたい。
チラっと俺に気づいた、どこぞの社長が振り返る。
まあ、男の俺から見ても我が兄ながら顔だけはいいとは思うけど。
「そんなとこで何してんの。」
何故かあきれ顔。
「たまには一緒に飲もうぜ。お前もいつも運転しなきゃいけなくて飲めないし。」
まあーーーほんの少しだけ優しさとかもあるのかもしれない。
俺はジャケットを脱ぎ、ネクタイを外し、ダイニングの椅子に置く。
兄貴の隣に座り、テーブルの上にある空のグラスにワインを注いだ。
本当さ、いっつも思うんだけど、社長ってだけで何でこんな裕福なんだよ。俺なんてこの部屋の半分くらいの広さの部屋だし。こんな高級ワインを簡単に空けたりもしない。
俺の場合、毎朝のコイツの世話とかの分も給料として貰いたいくらいだ。
「なあ。晃ってさ、どんな子がタイプなの?」
「はっ?」
「だって、お前に彼女いたとか想像できねえし。」
ワイングラスを揺らしながら、片方の手は口元におき、考えている風に見てくる。
「お、俺にだって、彼女くらいいたことあるし。」
「へえ?今は?」
「ーーー・・・・・・どこぞの社長のせいで彼女作ってる暇なんてありませんが?」
自然と顔が引きつる。けれど、それは事実だ。
人の予定関係なしにいきなり夜に呼び出されたりもするから、酒だってほとんど飲まないし。
「へえ。それは困った社長さんだねえ。」
とか言いながら、上から目線というよりニヤニヤして笑っている。
「なので、俺としては毎日甲斐甲斐しく世話してくれる家庭的な彼氏でも見つけてほしいって思ってるんですけどね。」
仕返しに嫌味たっぷりで言ってやった。
「えー、」
少し考えてるかのような仕草で残ってるワインを飲み干す。
「あ」
さらにワインをグラスに注ぎ、一口飲んでから俺の方を向く。
「それってさ、お前でいいんじゃない?」
「ーーー・・・・・・。」
我ながら名案とか言いながらケラケラ笑って高級ワインを流し込む。
さらに新しいワインを開けて飲み始める始末。
「え?は?ちょ、え?」
酔っ払って頭おかしくなったんじゃね?
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