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第27話
「よくこの部屋を当日に取れたな。」
ちょっと感動しながら言うと兄貴は笑いながら言う。
「当たり前じゃん。ここ高瀬家専用の部屋だし。俺ら家族しか入れねえ部屋だよ。」
それ知らなかったんだ、みたいな感じで笑う兄貴に少しだけムッとする。
「ここはお祖父様がお祖母様と二人で過ごしたくて作った部屋だよ。結婚する前、ここの部屋に泊まって、あの露天風呂で。」
俺の隣に並んで立つ兄貴が露天風呂を右手で指差し、左手でグッと抱き寄せられる。
「えっ、ちょ、ちょっ、何!?」
慌てる俺をよそに、耳元に息がかかる気がしてバクバクと心臓が煩い。
「あの露天風呂でプロポーズしたらしいよ。」
やたら優しくて低めで甘い声がそんなことを暴露した。
素っ裸でのプロポーズとか若干引きそうになったが、よく見るとベンチがあって、当日は花火大会があったらしく、その花火を服を着ながらベンチに座って見ていたときにしたらしい。
お祖父様、どちらかと言うと強面なのにめちゃくちゃロマンチストで笑いそうになってしまった。
部屋の名前『ゆきの間』もお祖母様の名前『幸枝(ゆきえ)』からつけた名前らしい。
お祖父様ってお祖母様のこと好きすぎだろ。
あの二人が年取っても変わらずに仲良いのはそういうことなのかと納得もした。
でもそういう年に一度しかないタイミングとか綺麗なものを見て感動してる中で好きな人から一生を共にしたいなんて言われたらきっと最高なんだろうなあ。
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