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第31話

「もし時間あるようでしたら、良かったらお茶でもどうですか?」 まあ、マジで顔立ちとかいいからな。 男女問わずモテるし。そんなん前からわかってたことだけど。 ーーー・・・・・・ムカつく。 「兄さん。お待たせ。」 営業スマイルを称え兄貴の前に行ってやった。 「この方が弟さんですか?兄弟揃ってかっこいいですね。弟さんも良ければ、私達とお茶でもしませんか?」 女性は苦手ではないし、むしろ彼女は欲しいと思ってたりもする。 じゃないとーーー後戻りできない感情に囚われて溺れて、這い上がれなくて堕ちていきそうになるから。 俺的には出会いのチャンスなんだろうけど。 見た目だけでなら小柄で可愛らしい雰囲気の二人だ。 でも今はーーー・・・・・・。 「ごめんね〜?俺、ずっと仕事で忙しくてすごい久々に弟との旅行中なの。だから、君たちとはお茶できないんだ。晃行くよ。」 会社で女性社員に誘われて断るときみたいに満面の笑みで柔らかめな口調で言うと俺の腕を引いて店を出る。 店出てから無言のまま手を引いて早足で歩いていく。 土曜日の昼過ぎの温泉街で人も多いのに、これは目立つ。 兄貴の容姿はただでさえ目立つのに、男の手を無言で握ったまま歩いてるなんて、さっきから周りの視線が痛えよ。 「ちょ、おい、兄貴。止まれ、止まれって。」 そう言うとピタっと止まる。 「・・・・・・はぁ、ごめん。」 目の前は温泉街を抜けていつの間にやら海が見えていた。 「兄貴。海寄って行こうぜ。」 今度は兄貴の隣に並んで仕方ないから繋いだままの手はそのままにして海へ向かう。

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