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第32話

このくらいの季節に浜辺を歩いてる人はほとんどいなくて、子供の時以来の海に俺は少しだけ楽しくなっていた。 なんとなく二人で浜辺を歩いてると兄貴が突然しゃがみこんだかと思いきや、海から離れた砂浜で寝転がる。 「・・・・・・本当にごめん。」 「何が?」 俺も兄貴を真似て隣で寝転んだ。 風が心地良くて波音すら静かで、落ち着くけど兄貴と二人っきりとか考えると落ち着かない。 「お前はあーゆう感じの子たち、好きだろ?俺はどうしても異性は駄目だけど話す分には平気だし。あのままお茶してたら・・・・・・。」 そんな不安そうな顔するくらいなら言わなきゃいいのに。 「何を弱気になってるんだか知らねえけど、俺は別に今は出会い求めてないし、昨日も行ったけど、どこぞの社長の世話だけで手一杯なんだよ。今は彼女なんて欲しいって思ってないし。」 ふと目の前が暗くなり、兄貴が半分身体を起こして俺を見下ろしていた。 昨日からおかしい。 兄貴にこんな風にされると心臓が煩くなる。 今もドキドキも鼓動が早すぎて苦しい。 じっと見つめてくる視線から外せなくて俺も見つめる形になってて、兄貴の不安そうな瞳が伏せられたかと思うと、唇に当たる柔らかな感触。 昨日からもう何度目かわからないキスに平然と応えてる自分もどうかと思うのに。 それが嫌じゃなくてーーー・・・・・・。 もっとして欲しいとか思うーーー・・・・・・。

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