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第43話
そう聞きたいのにそんなこと聞けるわけがなくて。
兄貴は酒飲みながら上機嫌で車の中でも聴いた洋楽を口ずさむ。
「その曲、さっきも歌ってたけど好きなの?」
「あー、これ?この曲は元々お前が気に入ってた曲だろ。」
「え?そうだっけ?」
たしかに雰囲気とか好きだけど。
初めて、聴いたような気がするんだけど?
「まあ原曲を気に入ったというよりはカバーしてるのを聴いて気に入ったという方が正しいかもしれないけど。」
「どういうこと?全然記憶にねえ。」
そう言うと兄貴は短いため息をついてから話し始めた。
「・・・・・・俺、高校生の頃に学校の奴らとバンド組んでて高3の文化祭でやる曲の中にこの歌入ってたんだよ。家でギター弾きながら歌う練習しててそれを聴いてた晃がめちゃくちゃカッコイイって褒めてくれてさあ。」
俺が小6くらいの話?だよな。
そんなん覚えてねえし。
「俺はお前にカッコイイって言われて嬉しくてそれからずっと好きなんだよ、この歌が。」
照れたのか視線逸して言うのが可愛い。
「へー。たしかに、兄貴が歌ってるのカッコイイって思うよ。」
発音綺麗だし、声が合ってるし。
「・・・・・・お前、ホントそういうところだよなあ。」
わけわかんない事を言った兄貴は自然な流れでキスをする。
「そういう無自覚なところ、ズルイんだよ。」
そんなこと言われても知らねえしって思う。
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