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第56話

怒った?怒らせた? わかんねえ・・・・・・何で怒るんだよ。 「あのさ、俺が女ダメだってわかってるよね?お祖父様とお祖母様はまあ会社のこともあるだろうし、同性しか駄目だってのも受け入れ難い人たちだってのはわかるんだけど。お前は・・・・・・お前だけはわかってくれると思ったのに。」 どうして、兄貴がそんな泣きそうな声なんだよーーー・・・・・・。 意味わかんねえよ。 「そ、それはわかってる。でも実際は・・・・・・そんな一時しのぎでバレたらどうするんだよ。」 「はぁ、あのさ・・・・・・俺、別に芸能人とかじゃないし、一般人だよ?バレたって別にどうにかなるだろ。」 いや、何言ってんだよ。 たまにビジネス雑誌でインタビューとかされてるだろ。 その時点で普通の一般人じゃなくて、日本の中で最も有名な一般人なんだよ。 そんな奴が結婚だの女性パートナー連れて何かの会場に現れたらちょっとしたニュースになるだろうが。 つか、そんなことはどうでもいいんだよ。 兄貴の考えがわからなくてどうすればいいのかわからない。 俺は自分が女装してとか意味わかんねえし、兄貴が泣きそうな声でとか冷たい声でとかもわかんない。 好きな人いるくせに弟の俺に何を求めてんだよ。 「・・・・・・晃はいいの?」 額に手を当てて俯きがちに言うから表情がわからない。 淡々とした冷たい声で聞かれる。 いいの、って何がだよ。 「俺が、誰か女性といてもいいわけ?というか、世間体を立てるために俺が誰かと結婚してもいいの?」 チラっと俺を見ながらわざと強調したかのようにゆっくりとはっきりと言う。 真っ直ぐに目を見つめられて、表情が感情が読めなくて目を逸らすこともできない。 心臓がドキドキと速くて、問われてる意味がわからないし、俺が兄貴に抱く想いを気づかれてるのかとか、それは嫌だ、兄貴の隣には俺じゃなきゃ嫌だとか色んな想いや感情で息が苦しい。 「・・・・・・答えろよ。その涙出てんのがお前の答えじゃねえの?」 泣きたくなんてないのに、こんなことくらいで泣くなんて女々しすぎて嫌なのにーーー・・・・・・。 感情が上手くコントロールできなくて、拭っても拭っても涙が出てくる。 「晃、答えろよ!」 強めの口調で言われ、心臓が痛いくらいに張り裂けそうなくらいにバクバクしていて、頭の中が真っ白な状態で口を開いた。

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