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第57話 嫉妬

「・・・・・・別に、俺は弟でただの部下だし。つか、俺に女装させるとかじゃなくてさ、どうしても女性パートナーが必要だったら、」 頭ん中ぐちゃぐちゃでーーー・・・・・・。 「兄貴の好きな人にそれ、させろよ。好きな人いるんだろ?何で俺がお前のパートナー役させられなきゃならねえんだよ。それに結婚なんて、それこそ弟でしかない俺がどうこう言う問題じゃねえし。そんなこと、そんなの・・・・・・いいのかって聞かれても困るんだよ。」 今は彼氏いらないって言ってたくせに好きな人はいたのかよ。 好きな人いるくせに何で弟の俺をあんな風に抱いたんだよ。 旅行だって、その好きなやつと行けば良かったじゃねえか。 好きな人いるくせに今更?世間体のために結婚しようがどうしようか知らねえよ。 実の弟をセフレの一人にするとか意味わかんなさすぎて、ムカつく。 言いたいこと色々あるけれど、どれも口に出すことはできなくてーーー・・・・・・。 「俺はこんな想いするくらいなら、兄貴の退屈しのぎになんてなりたくなかった。男相手に抱かれたくなんてなかった。兄貴に、抱かれたくなんて、なかった。」 「・・・・・・そうかよ。」 頭が混乱していて自分が何を言ってしまったか把握する前に兄貴の低めで冷たい声音で放たれた一言でこの話が続くことはなかった。 何も言わず車を発進させる。 しばらく走って高速を降りた。 お互い無言で気まずい空気しか流れない。 好きな人いるくせに、いつかはその人のところへ行くくせに、どうして俺を抱いたんだよ。 お前に抱かれて、甘い言葉囁かれて、可愛いって何度も言われて、堕ちないわけねえだろうが。 好きな人のことなんて知りたくなかった。 それならまだ形式上のパートナーとして女性を相手にしてくれた方が良かった。 女性相手じゃそういう関係になれないってわかってるから。 ーーー・・・・・・好きになんてなりたくなかった。 いい大人がすごい子供じみた嫉妬するなんて滑稽すぎて笑えてくる。

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