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第59話
甘い言葉なんて一切なくて。
名前を呼ばれることもなくて、後ろから犯され顔を見ることもない。
たいした前戯もなくて、乱暴に突っ込まれる。
激しく繋がる音とそれによる水音。
二人の上がる息遣い。
身体は悦んでいるのかどんなに酷くされても従順に応えるのがすごく嫌だ。
ーーー・・・・・・浅ましい。
嫌だ、止めてって言葉には出すくせに、ここ何日かで覚えてしまった快楽に甘い声まで上げてしまう自分が嫌だ。
何も言わず、聴こえる息遣いが上がっていてどんな顔をしてるのかが気になったから、四つん這いのような体勢のまま、顔だけを後ろに向けた。
一瞬だけ見えた兄貴の顔。
何で、何で、何でーーー・・・・・・。
そんな余裕ない顔してんだよ。
好きな奴いるくせにーーー・・・・・・。
どうして、他の男、へーきで抱けんだよ。
何で泣きそうになってるんだよーーー・・・・・・。
「・・・・・・あッ、はあッ、」
突然体勢を変えられ、いわゆる正常位で最奥を突かれる。
ただの快楽求めてだけの関係は嫌なのに、兄貴が相手ならいっそうのことそれでもいいやって思えるのが嫌だ。
俺のことかなり無理矢理抱きながら泣きそうで余裕なくして、吐息混じりな消え入りそうな声が聴こえる。
「はあッ、晃、はさ、どういうつもりで俺に抱かれてんの?」
一旦動くのをやめた兄貴の手が俺の目元にうっすらと滲む涙を拭う。
「どういうってーーー・・・・・・。」
好きだから、なんて言えねえだろ。
「俺は、」
腕を抑えつけていた兄貴の手が俺の指と絡めるようにして繋ぎ直す。
焦ったように、余裕なくして、かなり強引にろくに慣らしもしないで奥を突くくせに、繋いだ手とかキスとかが優しすぎて何も考えられなくなる。
「俺はお前のこと、たかが弟なんて思ってない。」
「あっ、はっ、ンッ、ハァっ、ん、んんぅ、アッ、いっ、イクッ、いっちゃ、」
「いいよ、俺も、イクッ。」
ぎゅっと手を繋ぎ直してキスして、奥を突かれ絶頂を迎えると俺の腹の中で兄貴も果てた。
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