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第66話

「キスだけで、そんなトロトロな目しちゃって、本当に可愛いね、お前って。」 目を細めてクスっと笑う兄貴の濡れた髪から水が滴り落ちてて、年齢の割に鍛えられた身体に雫が落ちるーーー・・・・・・。 ごくりーーーと思わず生唾を飲んでしまう。 これ以上ここにいたら兄貴が欲しくてたまらなくなる。 「のぼせそう・・・・・・だから出よ。」 兄貴を直視できなくて視線が泳ぐ。 「・・・・・・お前が昔のまんまで良かったよ。」 「ん?何か言った?」 「何も言ってねえよ。ほら、髪乾かしてやるから出ようぜ。」 風呂を出て洗面所の鏡の前で髪を乾かしてもらう。暖かい風と優しい手つきに眠くなってくる。 「眠いの?」 「・・・・・・うん。」 「やっぱりここに泊まれって。早く起きて帰れば問題ないだろ?」 「・・・・・・うーん、そうする。」 まだ寝るには少しだけ早いけれど、二日間、いやほぼ三日間色んなことがありすぎて疲れて眠い。 ベッドで向き合って抱きしめられて寝る。 「・・・・・・今日はもう本当に何もするなよ。」 「わかってるよ。俺だってさすがに無理だ。」 クスクス笑って髪をなでながら言う。 昨日から散々ヤりまくってて忘れてたけど、兄貴は30半ばだしな。それにしちゃ体力あると思うけど。 「そういえばさ、この前の会食で言ってたお見合いどうすんだよ。」 「あー、あれね。どうしよっかね。」 俺に女装させて兄と見合いさせるなんて意味不明なことを企てられて、その見合いが成功した暁には似た女性を探すとか意味がわからなすぎる。 「お祖父様たちも本当に何を考えているんだろうな。」 「あ、お祖母様に電話したときに好きな人できたからってお見合いとか今後はしないって言ったし、大丈夫じゃない?」 「・・・・・・好きな人。」 「え?何?まさか誰それとか言うんじゃねえだろうな?」 「い、言わないって。ちゃんと、わかってる・・・・・・。」 「ふ、可愛い。今後のことはさ、どうにでもなるよ。きっとな。俺がちゃーんとお前のこと守ってやるから、お前は俺にだけ甘えとけよ。」 「・・・・・・だから、俺が兄貴を守るって言ってんだろ。立場とかもあるんだし。それに俺はそんな弱くねえよ。」 「お前のそれって俺が言ってるのとだいぶ意味違うんだけど。」 「違わない。小さい頃から言ってるし。俺は兄貴を守れるくらい、強くて何でもしてやれるようになりたいってずっと思ってるんだ。」 「・・・・・・へえ。つか、お前もう寝ろよ。眠かったんだろう?」 背中をトントンと優しく撫でながらもう片方の手が頭をぐっと胸元へ押し付ける。

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