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第二章・6

 朝、起きた場所が自分の部屋であることに、玲衣は驚いた。 「哲哉さまが、運んでくださったんだよ」 「僕、失礼なことを……」  夜伽を命じられたのに、寝入ってしまうとは。  自分の体を両腕で抱き、身震いする玲衣に、池崎が穏やかに声を掛けた。 「大丈夫。哲哉さまは、怒ってはいないよ」 「そうでしょうか」 「逆に、褒めてたよ。ほら、あのカンバス。あの白を見通したことを伝えたんだ」 『彼をイメージして描いたものだったが。この白に気づくとはな』  そう、哲哉は感心していたという。 「だから、気にしないで。もうすぐ朝食だよ」 「ありがとうございます。でも僕、何だか食欲が無くて」 「本当? それはいけない」  体温計で熱を測ってみると、38℃以上ある。  大変だ、と池崎は医師の手配をし、玲衣の汗に湿ったパジャマを変えた。 「僕は哲哉さまの朝食を準備しなきゃならないから、少しここを出るけど」  絶対に動かず、ちゃんと寝ているように。 「すぐにお医者様が来てくださるから」 「すみません」  池崎が寝室から出て行ってしまうと、急に静かになった。

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