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第三章・3
「失礼します」
「ああ、入れ」
医師を見送った池崎が、哲哉に呼ばれてやって来た。
「玲衣の様子は?」
「よく眠っています」
そのことだが、と哲哉は池崎に目を向けた。
「彼を見る私の目は、君から見てどう映る?」
「大切にしておいでだ、と思います」
「やはり、そうか」
哲哉は、溜息をついた。
「今までの玩具は、そんな風には見ていなかったのだが」
「哲哉さまは、これまでのモデルを皆、大切に扱われましたよ」
では。
「では、なぜ逃げる。この屋敷から、いなくなる?」
「それは、わたくしには見当がつきません」
ただ。
「ただ、玲衣くんは、今までのモデルとは少し違う子だ、とは思います」
「どこがだ?」
「それも、わたくしには見当がつきません」
まだ。
「まだ判りませんが、じきに知るようになる、かと」
「そうかな」
「答えを急ぐことは、ありません」
そうだな、と哲哉は短い返事をし、パソコンの電源を入れた。
彼の仕事が、始まるのだ。
池崎は静かに礼をし、退出した。
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