18 / 87

第三章・4

 まだ熱が続いてふらつく玲衣に、池崎は朝食を用意した。  ワゴンに乗せて寝室へ運ぶと、起き上がって服に着替える途中の彼がいる。 「寝てなきゃ、ダメだよ!」 「でも、そんな重篤な病気じゃないみたいですし」 「起き出して倒れたりすると、僕が哲哉さまに叱られちゃうよ」  玲衣は、池崎にパジャマに着替えさせられ、もう一度ベッドに逆戻りだ。  トレイに乗せられた料理を食べながら、玲衣は池崎に訊いてみた。 「哲哉さん、僕のこと何かおっしゃってましたか?」 「心配しておられたよ」 「……」 「どうしたの?」 「本当かなぁ、って思って」  池崎は、笑顔で答えた。 「本当だとも。君は、これまでの、どのモデルより哲哉さまに気に入られてるよ」 「そうですか?」 「そうとも」  それを聞くと、少し食べる勢いのついた玲衣だ。  きちんと食事を摂って、早く治らなきゃ。  そんな風に、思えて来た。  一生懸命に食事を摂る玲衣を見て、池崎は微笑ましかった。 (哲哉さまは、この子に惹かれてらっしゃる)  おそらく、心に傷を負った者同士のシンパシーを感じるのだろう。  だがそれは、哲哉と玲衣、どちらにも言わなかった。  やがて、互いに思い合うようになることを、願った。

ともだちにシェアしよう!