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第三章・5
熱が下がった後の玲衣は、ゆっくりと屋敷に馴染み始めることにした。
哲哉も、許してくれた。
『モデルは、完治してからにしよう』
そう言って、庭の散策などを勧めた。
万が一のことを考え、時間を決めて。
池崎を、同伴させて。
「哲哉さまは、心配性なんでしょうか」
「それは、君だから心配なさってるんだよ」
そして池崎は、重ねて玲衣を特別視する。
「君は、哲哉さまの心を癒してくれる存在になるかもしれない」
「そうでしょうか」
どちらかと言えば、僕の方が癒されてる気がする。
そう考えるようになった、玲衣だ。
食事の時は必ず顔を合わせる。
哲哉は無口だが、その落ち着いた物腰は、玲衣を安心させた。
すぐに激昂して、暴力をふるっていた父親とは、大違いだ。
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