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第三章・6
「僕、哲哉さまのことが好きです」
「今度、ご本人にそうお伝えするといいよ。きっと、お喜びになる」
「はい」
そこで玲衣は、花壇の花を選んで寄せ植えを作った。
クリーム色のペチュニア大小をメインフラワーにして、差し色にペンステモンを入れる。
後は、イソトマ、バーベナで飾る。
「できました!」
「これはいい。哲哉さまも、きっと褒めてくださるよ」
ダイニングに、飾ろう。
そう言って、池崎は花の植えられたポットを運んでくれた。
夕食時、哲哉はテーブル脇にしつらえられた寄せ植えに気が付いた。
ともすると地味に見えるペチュニアを、真っ青なペンステモンが引き立たせている。
「これは、池崎の作かな?」
「いいえ。玲衣くんが作りました」
玲衣が、と哲哉は彼を見た。
そこには、少しうつむき加減の少年がいる。
哲哉の評価を、ドキドキしながら待っている玲衣がいる。
「見事な色彩感覚だ。バランスがとれていて、とても美しい」
「ありがとうございます!」
その席では、哲哉はいつもとは違い、よく話した。
「土は、どうだった?」
「心地よい湿り気が、新鮮でした」
「花は好きか?」
「はい。今日で、もっと好きになりました」
「よければ、アレンジメントや投げ入れにも、挑戦してみるといい」
「ありがとうございます」
一歩、哲哉さまに近づけた。
そう考えると、幸福感を覚える玲衣だった。
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