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第四章・5
「あの。哲哉さま?」
「う、うん。それは、良かった。……と言うべきなのかな?」
「ありがとうございます」
「……」
どうしようか。
哲哉は、考えた。
(発情期が来たら、玲衣を抱こうと思ってはいたが)
しかし、あまり露骨にがっつくのは、いかがなものか。
(ここはひとつ、数日間様子を見て……)
そこで玲衣が、はにかみながら言った。
「それで、その。もしよろしければ、僕を……」
「あ、うん?」
「僕を、夜伽に……」
「いいのか?」
「僕、発情期を迎えたらそうしよう、って決めてたんです」
哲哉は、コーヒーを一口飲んで、心を落ち着かせた。
「無理はしなくてもいい。じき、時は来る」
「無理なんかじゃ、ありません。だから」
だから、僕を抱いてください。
頬を染めながらそう訴える玲衣には、これまでに見られなかった艶がある。
哲哉は、うなずいた。
「では、今夜。私の部屋で、待っている」
「ありがとうございます」
傍では、池崎がホッとした表情を作っていた。
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