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第五章・6

「あの、忘れていたわけではないんです。ごめんなさい」 「冗談だ。気にするな」 (可愛い寝言も、聞けたことだし) 『好きです。哲哉さま』  無防備な精神状態で口にした、恋の呪文。  玲衣は、とんだ魔法使いだ。 (そんなことを言われれば、こちらもその気になってしまうじゃないか)  照れる気持ちを隠すため、哲哉は玲衣の掛布をぱっと剥いだ。 「さあ、支度をするんだ。朝食の席へ、行くぞ」 「は、はい」  気付けば、パジャマを着ている。 (僕は昨夜、あのまま寝ちゃったはずなのに)  これは、哲哉が着せてくれたに違いない。 「哲哉さま、パジャマありがとうございます」 「ん? ああ、大したことじゃない」  私はシャワーを浴びるので、君も部屋へ戻りなさい。  そう言って哲哉は、バスルームへ消えた。 「僕も、シャワーを浴びてさっぱりしなきゃ」  与えられた部屋へ戻ると、ドアの前に池崎が待っていた。

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